レトルト食品OEM入門|常温保存・ギフト向け製造の流れと費用

筆者紹介

目次

共働き世帯の増加や高齢化の進展により、手軽に調理できる“常備食品”への需要が年々高まっています。加えて、コロナ禍を契機にオンライン購入・在宅備蓄のニーズも拡大し、食品分野において「常温保存」「長期保存」が可能なレトルト食品が再注目されています。

近年では、単なる保存食の域を超え、“美味しいレトルト”という新たな価値提案が進んでいます。全国のご当地グルメや有名レストランの味を、再現性高く商品化し、ギフトやECで展開する動きが急増。消費者にとっては“外食の延長”、企業にとっては“販路拡張とブランド訴求”のチャンスとなっています。

こうした背景のもと、製造設備を持たない企業がOEM(委託製造)を通じて、レトルト食品市場に参入する動きが活発化しています。小ロット対応や試作支援を行うOEMメーカーの増加により、商品開発のハードルも下がり、今や飲食店・農業法人・食品ベンチャーなど、さまざまな立場から参入可能な環境が整いつつあります。

レトルト食品OEMとは?

レトルト食品OEMとは、自社で製造設備を持たない企業が、レトルト加圧加熱殺菌装置を保有する工場に製造を委託する仕組みです。レシピやパッケージデザインは依頼主が行い、工場側はレトルト対応の殺菌工程・充填・包装・検品・出荷などを担います。保存性の高さと常温流通のしやすさから、通販・ギフト・災害備蓄・海外展開など、幅広い販路に適しており、新規事業としての導入も増加中です。

例えば、地域の飲食店がご当地カレーをレトルト化し、観光地やECサイトで販売する事例は代表的な活用方法の一つです。

レトルト食品OEMのメリット・デメリット

レトルトOEMには、常温保存が可能で物流効率も良いという大きな魅力がありますが、その一方で殺菌工程による制限もあるため、特徴を事前に理解しておくことが重要です。

メリット

レトルト食品OEMは、保存性の高さと流通のしやすさを活かして、多様な販売チャネルに対応できるのが強みです。

  • 常温保存・長期流通が可能:冷蔵・冷凍保管が不要で販路が広がる
  • 小売・ギフト・通販まで幅広い展開が可能:常温での配送がしやすく、パッケージ訴求にも強い
  • 小ロット対応メーカーが増加傾向:初回500〜1,000袋程度から試作・量産できる事業者も

デメリット

一方で、レトルト特有の加熱工程により、味や食感の調整には工夫が必要になります。設備も限られているため、スケジュール確保も大切です。

  • 殺菌工程により味や食感の再現が難しい:高温加熱で風味が変化することもある
  • 初回試作にやや時間がかかる(2〜4週間):試作の調整やパウチ選定に時間が必要
  • 高温殺菌対応工場が限られる:設備が特殊なため、対応メーカー数は冷凍OEMより少なめ

レトルト食品OEMの依頼の流れと費用相場

OEMの進行には一定のステップがあり、それぞれに費用とリードタイムが発生します。早めの計画がスムーズな進行のカギとなります。

ステップ内容
1. 商品企画・レシピ提供商品コンセプトを設計し、必要に応じてプロのレシピ提案を受ける
2. 試作依頼味・保存性・食感を検証するサンプルを制作(3万〜10万円前後)
3. パウチ選定と殺菌方式決定内容物に適した包装・加熱方式(レトルト釜など)をメーカーと相談
4. 製造契約・量産開始条件が合えば契約。初回製造へ(MOQは500〜3,000袋程度が目安)

製造単価の目安

レトルト食品OEMの製造単価は、内容量・食材コスト・殺菌方法・パウチ仕様によって異なりますが、一般的に1袋あたり200〜600円前後が相場です。

レトルト食品OEMメーカーの選び方

成功のポイントは、商品ジャンルと得意分野が合致した工場を選ぶこと。対応範囲や殺菌方式の違いにも注目しましょう。

  • 加圧加熱殺菌設備(レトルト殺菌釜)を持っているか
  • 液体・固形・粘性食品などへの対応力があるか
  • 小ロット・試作費用が明確に提示されているか
  • 原料の持ち込み・調達やアレルゲン管理に柔軟か
  • 包装形状やパウチデザインへの対応力があるか

おすすめのOEMメーカー3選

レトルト食品OEMを検討する際は、加圧加熱殺菌設備の有無や対応品目、パウチ形状、流通設計への理解など、目的に応じた視点での比較が欠かせません。ここでは、製造実績・提案力・品質対応に優れた信頼性の高いレトルトOEMメーカーを3社ご紹介します。初めての方にも丁寧に対応してくれる体制が整っています。

  1. 清水食品株式会社(レトルト食品や缶詰のPB/OEM)
  2. サンハウス食品株式会社(カレー・シチュー・スパゲティーソース・スープ・中華・デザートなどの豊富な商材を提案)
  3. セントラルパック株式会社(FSSC22000を取得し、小ロット対応可能)

人気のOEM商品事例

レトルト食品OEMの活用例として、以下のような商品ジャンルが人気です。

  • ご当地カレー・スパイスカレー:観光地や地域産品としても定番
  • パスタソース・煮込み料理:味のバリエーションでシリーズ展開しやすい
  • スープ・ポタージュ:液体+具材で満足感のある商品設計
  • ミールキットの一部構成品:冷凍・冷蔵と組み合わせたハイブリッド展開も可能

失敗しないための5つのポイント

OEMでは初期コストを抑えられる反面、段取りや仕様ミスが大きなロスにつながることもあります。以下の点に注意して進めましょう。

  1. 試作の段階で風味・保存性・変色などを厳密に確認する
  2. パウチの材質・形状は販売チャネル(ギフト・EC等)を想定して選ぶ
  3. ラベル表示内容(賞味期限・栄養成分・アレルゲン)を事前にすり合わせる
  4. 自社で使用する食材が加熱対応か、再加熱可能かを確認する
  5. 最低2社以上に相談し、見積もり・スケジュール・条件を比較する

スムーズな立ち上げのために、まずは試作スケジュールの確保から

レトルト食品OEMは、保存性・物流効率・販路展開力の3点を兼ね備えた非常に実用性の高い手法です。冷蔵・冷凍に頼らず、ギフトや備蓄、海外展開にも柔軟に対応できる点で、今後の食品ビジネスを支える柱となりうる分野です。

成功のカギは、試作・ロット・表示内容・スケジュールの4点をきちんと設計し、信頼できるメーカーと連携すること。OEMに初めて取り組む方は、早めに複数社へ相談し、試作スケジュールの確保から始めましょう。あなたの商品が“常温でも届く感動”として、多くの人に届く未来がきっと開けるはずです。

まとめ|早めの打診で試作スケジュールを確保

レトルト食品OEMは、保存性の高さと物流のしやすさから今後も成長が期待されるジャンルです。販路や企画の段階から相談できるOEMメーカーを選ぶことが、成功への近道です。

関連記事一覧