食品OEMのメリット・デメリットを実例で解説

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目次

食品業界では、PB(プライベートブランド)商品の展開や地域産品の加工など、多様な目的で「OEM(受託製造)」の活用が進んでいます。特に、開発リソースや製造設備を持たない事業者にとって、OEMは強力なビジネスパートナーとなります。

しかし、安易にOEMを導入すると、思わぬリスクや損失を生む可能性もあります。この記事では、食品OEMのメリット・デメリットを整理し、導入判断の材料を明確化します。さらに、京都発の乾燥野菜ブランド「OYAOYA」の事例もご紹介します。

OEMとは?食品分野での活用が増えている理由

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、自社ブランドの商品を、他社に製造委託する仕組みのこと。食品業界では、飲食店やECブランドが商品企画を行い、OEMメーカーが製造・充填・包装まで対応する形が一般的です。

背景には、次のようなニーズの高まりがあります:

  • 設備を持たずに商品化したい
  • 小ロットでテスト販売したい
  • 高度な加工技術を使いたい
  • 表示や品質管理のプロに任せたい

このように、製造コストの削減やスピード感ある商品開発を目的に、多くの事業者がOEMを採用しています。

食品OEMのメリット

OEMには多くの利点があり、特に新規事業の立ち上げや拡張フェーズにおいて強力な選択肢となります。以下に主要なメリットを解説します。

初期コストを抑えて商品開発できる

製造設備や専門人材を社内で抱える必要がないため、初期投資を大きく抑えることが可能です。特にテスト販売や少量生産を前提とした商品開発では大きな利点となります。

専門技術・設備を活用できる

乾燥、冷凍、レトルト、粉末など、特定の加工工程においてはOEMメーカーが有する設備・ノウハウを活用できます。これにより、製品の品質向上や安定供給が実現しやすくなります。

小ロット・短納期対応が可能なケースも多い

最近では、初回300個〜対応可能な小ロットOEMも増加しています。これにより、初期ロットでの市場テストや限定販売を手軽に実現できます。

法規・表示対応も依頼できる

食品表示法や栄養成分表示、アレルゲン管理、薬機法との整合など、複雑な規制への対応もOEMメーカーがサポートしてくれるケースが多く、スピーディな商品化が可能になります。

食品OEMのデメリット|導入前に知っておくべき注意点

一方、OEMには一定の制約やリスクも伴います。以下では、よくあるデメリットとその要因を整理します。

製造コントロールが難しい

製造現場が外部にあるため、自社で細かな品質管理や工程管理を行うことが難しくなります。万が一トラブルが発生した場合、対応の柔軟性が限られることもあります。

小ロットではコスト高になることがある

少量生産の場合、スケールメリットが働かず、1個あたりの原価が高くなる傾向があります。価格設定次第では利益が出づらくなる点に注意が必要です。

ノウハウ流出や類似商品のリスク

非開示契約(NDA)を締結しないまま製造を依頼すると、レシピやアイデアが第三者に流出するリスクがあります。ブランドの独自性を維持するためには、法的な対応も重要です。

【事例紹介】Agritureの乾燥野菜ブランド「OYAOYA」のOEM活用

OEMの利点を活かし、ブランド力と地域資源を融合した成功例として、株式会社Agritureの乾燥野菜ブランド「OYAOYA」をご紹介します。「OYAOYA」は、京都産の規格外野菜を活用した乾燥野菜シリーズを展開するブランドです。現在は、原料調達から加工、パウダー化、OEM対応までを一貫して自社で実施。

しかし初期段階では、乾燥野菜製造ができる農家へOEMを通じて商品化をしていました。小規模の生産者などであれば、数袋~のOEMが可能でありスモールにテスト販売をすることが可能です。テスト販売を通じて、売れる品目やパッケージの容量に合わせて製造量の拡大をすることで、リスクを抑えた商品開発が可能です。

OEM導入は“目的に合わせた判断”がカギ

食品OEMは、スピード感ある商品化・低コストでの立ち上げ・高度な技術の活用など、多くの利点を提供してくれます。一方で、自社で管理できない領域が増えることで、品質トラブルや原価高騰といったリスクもあります。

重要なのは、「何をOEMに任せ、何を自社で握るか」を明確にしたうえで、信頼できるパートナーと協働することです。
まずは小ロットでテスト販売を行い、PDCAを回しながら本格展開を検討する形が、多くの事業者にとってリスクを最小限に抑える方法といえるでしょう。

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