食品ECの特定商取引法表示|OEM事業者が必ず押さえる必須項目

食品ECの特定商取引法表示|OEM事業者が必ず押さえる必須項目

「食品OEM商品をECで売り始めたけど、特定商取引法の表示って何を書けばいいの?」

先日、ある食品メーカーの新規事業担当者からそんな相談が届きました。OEM商品を自社ECで展開する企業が急増している一方で、法令対応の不備で消費者庁から処分を受けるケースも着実に増えています。表示範囲が広く食品ならではの特殊ルールもありますが、ポイントさえ押さえれば対応は難しくありません。この記事では、食品OEM事業者が実務で使える表示要件を具体的に解説します。

この記事でわかること

  • 特定商取引法における通信販売の必須表示7項目
  • 2022年改正で厳格化された定期購入の表示義務
  • 食品がクーリングオフ対象外となる条件と実務対応
  • 消費者庁が実際に処分した違反事例とNGパターン
  • Shopify・BASE・STORESでの特商法ページ設定手順

目次

なぜ今、食品ECで特定商取引法対応が急務なのか

2022年改正で一気に厳格化された

2022年6月、特定商取引法は大きな改正を迎えました。通信販売(EC)における定期購入契約の規制が強化され、違反した場合の行政処分も一段と重くなっています。

改正前と改正後の主な変更点を確認しましょう。

項目 改正前 改正後(2022年6月〜)
定期購入の表示 最終確認画面での表示義務 各申込み段階での明示義務
解約妨害 規制なし 禁止行為として明示
行政処分 業務停止命令のみ 業務禁止命令(個人への適用)が追加

消費者庁による調査・処分件数が増えている

消費者庁による通信販売事業者への行政処分は増加傾向にあり、食品・健康食品・サプリメントカテゴリが大きな割合を占めています。食品EC事業者にとっては、決して他人事ではありません。

OEM商品の場合、「製造は委託先の責任」と考えがちです。しかし、ECで販売する事業者(販売名義人)が表示責任を負う点は見落としやすいので、あらかじめ把握しておく必要があります。

特定商取引法で義務付けられた7つの必須表示項目

基本情報の表示ルール(事業者名・所在地・連絡先)

必須表示項目は特定商取引法第11条に定められています。まず基本情報の3項目から見ていきましょう。

表示項目 記載内容 よくあるNG例
事業者名 法人の場合は登記上の社名 屋号のみ、ニックネームのみ
所在地 番地まで記載(私書箱不可) 「東京都○○区」のみで番地なし
連絡先 電話番号(メールのみはNG) メールアドレスのみ記載

「電話番号を公開したくない」という相談はよく受けます。その場合、請求があれば遅滞なく開示できる体制を整えたうえで「請求により開示します」と記載する方法が認められています。ただし、形だけの対応では意味がなく、実際に開示できる体制が必須です。

販売条件の表示ルール(価格・引渡し時期・返品特約)

残り4項目は、販売条件に関するものです。

表示項目 記載内容 食品特有の注意点
販売価格 税込価格(送料別の場合は別途明示) セット商品は個数・内容量も明記
引渡し時期 「注文から○営業日以内」など OEM製造の場合は余裕を持たせる
支払方法 利用可能な決済手段すべて 代引き手数料は別途明示
返品・交換 返品特約の有無と条件 食品の特殊ルールあり(後述)

引渡し時期は「できるだけ早く」のような曖昧な表現はNGです。「注文確定から3〜5営業日以内に発送」のように具体的な日数で記載します。OEM商品で製造に時間がかかる場合、実態より短い日数を書いてしまうケースがあるので注意してください。

定期購入(サブスク)販売時の追加義務

2022年改正で強化された表示要件

健康食品やサプリメントのOEM商品では、定期購入型の販売が多い傾向があります。2022年改正では、この定期購入に関する表示義務が大幅に強化されました。

申込みの最終確認画面で、以下をすべて表示する義務があります。

  • 定期購入である旨(「初回限定価格」の近くに必ず表示)
  • 定期購入の回数・期間
  • 各回の商品の数量・価格
  • 解約・退会の方法と条件
  • 次回発送日と次回請求額

特に重要なのが、「初回980円」などの訴求価格と定期購入条件を同等の視認性で表示することです。初回価格を大きく表示して定期条件を小さく記載するパターンは、処分事例の大半を占めています。

解約・退会条件の明示ルール

解約条件は、消費者が容易に確認できる場所に記載しなければなりません。具体的には次の内容が必要です。

  • 解約可能な期限を具体的な日数で表示(「次回発送の8日前まで」等)
  • 解約方法(電話・メール・マイページ等)
  • 最低購入回数の縛りがある場合はその回数と条件

「解約は電話のみ、平日10〜12時のみ受付」のような仕様は、消費者が解約しにくい設計として法令違反と判断される可能性があります。解約しやすい設計こそが、長期的な顧客信頼の土台になります。

クーリングオフと食品の取扱い

通信販売はそもそもクーリングオフ対象外

実は、通信販売(EC)はクーリングオフ制度の対象外です。ここを誤解している事業者は少なくありません。

クーリングオフが適用されるのは、訪問販売・電話勧誘販売など「不意打ち性」のある販売方法に限られます。ECは消費者が自ら選んでアクセスする販売形態なので、法律上のクーリングオフは発生しません。

ただし、特定商取引法の規定により、通信販売にも「返品特約」の表示義務があります。

返品特約の有無 消費者の権利
特約あり(返品不可と明示) 特約に従う(返品できない)
特約なし 受取から8日以内、送料消費者負担で返品可

食品は衛生上の理由から、返品不可とする特約が一般的に認められています。ただし、品質不良・誤発送など商品側に問題がある場合は、別途対応が必要です。

返品・交換の実務対応

OEM食品の実務では、以下の3パターンを想定した返品規定を用意しておくことをおすすめします。

  1. 商品に問題がある場合:受取から8日以内に連絡、送料当社負担で交換または返金
  2. お客様都合の場合:未開封・未使用かつ返品特約の範囲内でのみ対応
  3. 定期購入の解約後発送:事前連絡なしの受取拒否手順を明記

この3パターンをあらかじめ整理しておくと、カスタマーサポートの対応も格段にスムーズになります。

消費者庁の処分事例から学ぶNGパターン

実際にあった違反事例3選

消費者庁が実際に処分した事例を見ていきます。いずれも食品・健康食品カテゴリの案件です。自社サイトと照らし合わせながら読んでみてください。

事例1:定期購入の初回価格を強調しすぎたケース
初回「1,980円(税込)」を大きく表示し、2回目以降「5,400円」の定期購入条件を小さな文字でのみ記載。消費者からの苦情が多発し、業務停止命令の処分を受けました。

事例2:解約を電話のみにして事実上受付しないケース
解約専用ダイヤルに繋がらない・折り返しなしの状態が継続。不実告知として行政処分を受けた事例です。

事例3:所在地を私書箱のみ記載したケース
「○○私書箱△号」のみ記載で実住所の開示を拒否。処分後に実住所を開示させられた結果となりました。

NG表示チェックリスト

自社サイトの特商法ページを見直す際は、このチェックリストを活用してください。

チェック項目 合格例 NG例
事業者名が登記名と一致 株式会社○○フーズ 屋号・略称のみ
所在地に番地まで記載 ○○県△△市□□町1-2-3 市区町村まで
電話番号が記載されている 03-XXXX-XXXX メールのみ
返品条件が明確 未開封品のみ8日以内 「基本的に不可」
引渡し時期が日数で明記 注文から3営業日以内 「なるべく早く」
定期購入条件が目立つ場所に 初回価格と同サイズで表示 小さく注釈のみ
解約方法と期限が明記 次回発送8日前までにメール 「お問い合わせください」

ECプラットフォーム別の設定手順

Shopify・BASE・STORESで特商法ページを設定する

各プラットフォームで設定場所と手間は異なります。自社の運用環境に合わせて確認しておきましょう。

プラットフォーム 設定場所 難易度 自由度
Shopify 「設定」→「ポリシー」から専用ページ作成 ★★☆ 高い
BASE 「ショップ設定」→「特定商取引法」タブ ★☆☆ 中程度
STORES 「ストア設定」→「特定商取引法に基づく表示」 ★☆☆ 中程度
独自EC(WordPress等) 固定ページを手動作成 ★★★ 最高

Shopifyの場合、管理画面の「設定」→「ポリシー」から「特定商取引法に基づく表示」ページを作成できます。フッターへの自動リンク設定も可能なので、全ページからアクセスできる状態にしておきましょう。

BASEの場合、専用の入力フォームがあるため、項目を埋めれば完成します。定期購入アプリを使っている場合は、追加の表示が必要なケースがあるので合わせて確認を。

STORESの場合も専用フォームがありますが、カスタムテキストの自由度はやや低めです。複雑な返品条件や定期購入の詳細を記載したい場合は、別途ページを作成して特商法ページからリンクする方法が現実的です。

どのプラットフォームでも、特商法ページへのリンクはフッターに常時表示することが推奨されています。サイトのどこからでも1クリックでたどり着ける状態を目指してください。

まとめ

食品OEM商品のEC販売における特定商取引法対応は、「知らなかった」では済まない法的義務です。対応状況を今一度、確認してみてください。

  • 必須表示7項目(事業者名・所在地・電話番号・価格・引渡し時期・支払方法・返品特約)は漏れなく記載する
  • 定期購入は2022年改正により表示義務が大幅強化。初回価格と同等の視認性で定期条件を表示する
  • 通信販売はクーリングオフ対象外。返品特約を明確に設定することが重要
  • 消費者庁の処分事例を参考に、「見えにくい・わかりにくい」表示を排除する
  • ECプラットフォームの専用設定を活用しつつ、必要に応じて独自ページで補完する

特定商取引法の対応は、消費者との信頼関係を築くための基盤でもあります。法令をクリアしながら「わかりやすいサイト」を積み上げていくことが、長期的な顧客獲得につながります。

よくある質問

Q1: 特定商取引法の表示ページは毎年更新が必要ですか?

A1: 法改正のタイミングで内容の見直しが必要です。2022年の改正のように大きな改正があった場合は必ず内容を更新してください。定期的に消費者庁のウェブサイトを確認する習慣をつけておくことをおすすめします。

Q2: 食品の返品は完全に断れますか?

A2: 返品不可の特約を明示すれば、お客様都合の返品は断れます。ただし、商品の品質不良や誤発送など、事業者側の過失による問題の場合は別途対応が必要です。特約があっても、事業者側の瑕疵には責任があります。

Q3: OEM製造委託先(工場)の情報も特商法ページに記載する必要がありますか?

A3: 原則として不要です。特商法が求めるのは「販売事業者」の情報であり、製造委託先の情報は対象外です。ただし、製造所固有記号など食品表示法で求められる情報は別途商品ラベルに記載する必要があります。

Q4: 定期購入に「最低3回継続」などの縛りを設定できますか?

A4: 設定自体は可能ですが、その条件を申込みの最終確認画面で明確に表示する義務があります。縛りがある場合、「○回継続が条件」「解約は○回目以降から可能」という内容を目立つ形で表示してください。小さな文字での注釈扱いはNGです。

Q5: 特商法ページはフッターに置けば問題ありませんか?

A5: フッターへの設置は適切な方法のひとつです。ただし、定期購入商品の申込みページでは、最終確認画面にも特商法の主要事項(定期条件・解約方法)を直接表示する必要があります。フッターだけに設置して申込み画面での表示を省略することは不十分です。

Q6: 個人事業主が食品OEMをECで販売する場合も同じ義務がありますか?

A6: はい、個人事業主でも法人でも同じ義務があります。特定商取引法は販売の形態(通信販売)に適用されるため、事業者の規模や形態は関係ありません。また2022年改正で業務禁止命令が個人にも適用されるようになったため、個人事業主でも対応を徹底する必要があります。

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この記事を書いた人

株式会社Agriture 代表取締役/食品OEMコンシェルジュ 乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業を手がける株式会社AgritureのCEO。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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