食品OEM(受託製造)は、プライベートブランド(PB)商品や自社オリジナル商品の開発において、コスト・スピード・技術の面で大きなメリットがあります。一方で、製造を他社に委託する以上、「契約書」はビジネスの命綱とも言える存在です。
現場では「発注書や見積書で進めてしまっている」「形式的な契約書を交わして終わり」といったケースが少なくありません。しかし、トラブルや誤解を防ぐためには、契約書の中身が“機能”しているかが重要です。
本記事では、食品OEM契約において実務的に押さえるべき7つの必須項目を、現場の視点から丁寧に解説します。他社との差別化のポイントや、初めてOEMを導入する企業にありがちな盲点にも触れていきます。
OEM契約書が重要な理由
OEM契約は「言った・言わない」の行き違いが致命的になりがちです。特に食品の場合、衛生管理・表示法・回収リスクなどの責任の所在が不明確だと、ビジネスだけでなくブランドそのものの信用を損なう事態に発展します。
また、開発・試作の段階では関係が良好でも、量産時の品質変化や取引拡大による利益配分のズレなど、状況の変化に対応するための「保険」として、契約書が果たす役割は年々重要になっています。
食品OEM契約書で押さえるべき7つの項目
1. 製造物の仕様・合意した品質の定義
- 味、形状、表示内容だけでなく、「完成品の状態で合格とする基準」を文書で定義する。
- 官能評価の基準値(例:塩分濃度、糖度、pH)や、「試作品と異なる部分がある場合は事前報告が必要」といった項目まで定めておくと安全。
2. 納期・納品条件・物流責任の所在
- 製造日・出荷日・納品日の定義を区別し、遅延時のペナルティや代替対応の記載まで網羅。
- 温度帯別(冷蔵・冷凍・常温)の物流において、破損・未着・誤配送時の補填責任まで記載できていると安全性が高まる。
3. 価格・支払条件・費用負担のルール
- 単価だけでなく、開発費・試作費・型代・キャンセル時の違約金なども明示する。
- 原料価格が高騰した場合の協議義務、支払いサイト(例:納品月末締め翌月末払い)の明記、インボイス制度対応有無も明確化。
4. 不良品の扱いとリコール時の対応
- 製造ミス・異物混入・表示ミスなどの不良品対応(返品/再製造/賠償)を想定。
- 製造ロットのトレーサビリティ保持義務や、行政報告義務の分担まで盛り込むと信頼性が高まる。
5. レシピ・デザイン・商標等の権利帰属
- 製品設計に関する知的財産がどちらに帰属するかを明確にする。
- 原料を依頼側が指定し、OEM側が配合を最適化した場合など、グレーゾーンの取り扱いも事前に明文化しておく。
6. 守秘義務と業務委託範囲の制限
- 秘密保持契約(NDA)を別途締結する場合でも、契約書内に守秘義務条項を残す。
- 製造委託を第三者に再委託しない、従業員への情報共有範囲を限定するなど、情報漏洩の二次的リスクまで想定した条文にする。
7. 契約期間・更新・解約の条件
- 期間の自動更新条項・中途解約条項・解約時の資材残在庫の扱いなどを明記。
- シーズン商品の場合は3ヶ月前までに更新有無を通知、パッケージ資材の買い取り義務を明示するなど、実務オペレーションに即した設計にする。
食品OEM契約は将来の信頼を守る仕組み
OEM契約は「事業がうまくいっているとき」よりも、「何かあったとき」にその真価を発揮します。特に食品業界では、法令・表示・衛生管理の責任範囲が複雑であるため、発注者・製造者のどちらがどこまで担保するかを明確にしておくことが、ブランドと消費者の信頼を守る鍵となります。
ぜひ本記事を参考に、御社のOEM契約書を実務レベルで見直してみてください。