ヨーロッパの食品展示会ガイド|SIAL・Anugaなど欧州市場への輸出商談

ヨーロッパの日本食レストラン市場は2024年時点で約37.7億ドル(約5,600億円)規模に達し、2032年には48.3億ドルへの成長が見込まれています。2019年に発効した日EU・EPAにより醤油・緑茶・日本酒等の関税が撤廃され、日本食品の価格競争力は大幅に向上しました。2024年のEU向け農林水産物・食品輸出額は858億円で、オランダ(268億円)、ドイツ(161億円)、フランス(144億円)が上位を占めています。

本記事では、欧州市場への食品輸出を検討する企業向けに、主要展示会・各国の市場特性・EU規制・流通構造を解説します。

目次

ヨーロッパの主要食品展示会一覧

展示会名開催時期会場特徴
Alimentaria3月(隔年)バルセロナ南欧・中南米市場に強み
IFE London3月ロンドン英国最大の食品・飲料見本市
Seafood Expo Global4月バルセロナ世界最大の水産物専門見本市
SIAL Paris10月(隔年)パリ世界最大級。7,000社出展。2026年開催年
Cibus Tec10月パルマ食品加工技術展。製造機械に特化
Fi Europe11月フランクフルト欧州最大の食品原料・機能性素材展
Anuga10月(隔年)ケルン世界最大の食品見本市。次回2027年
ISM Cologne1月ケルン世界最大の菓子・スナック見本市
Fruit Logistica2月ベルリン世界最大の青果物見本市

SIAL ParisとAnugaは隔年で交互に開催されます。2026年はSIAL Paris(10月17〜21日)、2027年はAnuga(10月9〜13日)が予定されています。JETROのジャパンパビリオンは両展示会に設置され、初出展企業のブース費用・通訳手配の負担を軽減しています。

国別の市場特性

フランス — 欧州最多の日本食レストラン

フランスには2023年時点で4,680店の日本食レストランがあり、欧州で最多です。フレンチシェフが醤油・ゆず・味噌を積極的に取り入れるフュージョン料理が定着しており、日本食材への需要は業務用・小売の両方で拡大しています。日本からの輸出額は144億円(EU向け全体の17%)。和牛、日本酒、柚子、高級和菓子などプレミアム路線が有効で、ワイン文化と親和性の高い日本酒のペアリング提案も進んでいます。

ドイツ — 健康志向と有機食品需要

ドイツへの輸出額は161億円(19%)で、EU向けではオランダに次ぐ規模です。デュッセルドルフに欧州最大の日本人コミュニティがあり、日本食材専門店が集中しています。Edeka、Reweといった大手スーパーでも寿司のり・そば・うどん・みりんが一般棚に並ぶようになりました。健康志向が強く有機食品への需要が高いため、EU Organic認証を取得した日本食品は優位に立てます。

英国 — デリバリー市場と日本酒

英国には日本食レストランが1,000店超あり、ロンドンを中心にクラウドキッチンで寿司・ラーメン・丼ぶりのデリバリーが急成長しています。英国はBrexit後にEUのEPAの対象外ですが、日英CEPA(包括的経済連携協定)を別途締結しているため、多くの日本食品の関税は引き下げられています。日本酒の認知度向上に向けたオールジャパン体制での取り組みが進行中です。

オランダ — 物流ハブ+急成長市場

オランダはEU向け輸出額268億円(31%)で最大の仕向先ですが、これはロッテルダム港を経由したEU域内への再輸出が含まれるためです。一方で国内消費も急拡大しており、日本食レストランは2014年の373店から2020年代半ばに1,100店超へと3倍に増加。アムステルダムだけで147店が営業しています。大手醤油メーカーが2024年9月にロッテルダムに地域物流センターを新設するなど、欧州物流の要衝として機能しています。

イタリア・スペイン・北欧

イタリアはフランスに次ぐ日本食レストラン数を持ち、食文化への感度が高い市場です。輸出額は69億円。スペインではマドリードを中心にデリバリー型の日本食が伸長しています。北欧ではスウェーデンを中心に冷凍アジア風ヌードルボウルの売上が増加し、健康志向と持続可能性への関心から日本食品が注目されています。

EU食品規制の要点

基本的な規制フレームワーク

  • EFSA(欧州食品安全機関)が科学的評価を担当。全輸入食品はEU食品法(Regulation EC No 178/2002)に準拠が必要
  • ラベル表示: EU公用語での表示、アレルゲン14品目の明記、栄養成分表示が義務
  • 食品添加物: 日本で一般的に使用されている添加物でもEUでは未認可の場合がある。2023年9月にだし入り味噌の輸出規制が緩和され、従来必要だった書類が免除に

Novel Food規制(新規食品)

1997年5月15日以前にEU域内で有意な量の消費実績がない食品は「Novel Food」として扱われ、EFSA(欧州食品安全機関)による安全性評価と欧州委員会の承認が必要です。申請から承認まで通常9ヶ月程度。2024年には明日葉茎汁が新規承認を取得し、日本の伝統食材でも前例が出始めています。こんにゃく、一部の海藻類、特定のキノコ類はNovel Food認定される可能性があるため、輸出前の確認が重要です。

残留農薬基準とFarm to Fork戦略

EUのMRL(残留農薬基準)は約1,300種類の農薬に設定されており、日本の基準よりも数倍〜数十倍厳しい品目が多くあります。特に茶葉・抹茶は粉末で濃縮摂取するため、EU輸出検査で不合格となるリスクが高く、栽培段階からの農薬管理が不可欠です。

2020年5月に採択された「Farm to Fork戦略」は2030年までに化学農薬の使用リスク50%削減を目標としており、今後はサステナブルパッケージングやカーボンフットプリント表示への対応も求められる見通しです。

日EU・EPAの関税メリット

2019年発効の日EU・EPAにより、15年間で99%の関税が撤廃されます。醤油、緑茶、日本酒は既に関税ゼロまたは大幅削減の対象です。原産地証明は自己申告制度を採用しており、輸出者自身が申告を行えるため手続きコストが低い点も利点です。

EU向け輸出額の国別データ

2024年のEU向け農林水産物・食品輸出額は858億円で、上位4ヶ国で全体の約75%を占めています。

順位国名輸出額構成比備考
1オランダ268億円31%ロッテルダム港経由の再輸出を含む。物流ハブ
2ドイツ161億円19%欧州F&B市場の24.8%を占める最大市場
3フランス144億円17%日本食レストラン4,680店。フュージョン需要
4イタリア69億円8%食文化感度が高い。都市部で日本食浸透
5ベルギー67億円8%EU機関所在地。国際色豊かな消費者層

日系企業の欧州進出動向

調味料メーカー

大手醤油メーカーは1970年代からデュッセルドルフを拠点に欧州展開を開始し、鉄板焼きレストラン運営を通じて醤油と現地食材の相性を提案する手法が先駆けとなりました。2024年9月にはオランダ・ロッテルダムに地域物流センターを新設し、プレミアム醤油の配送を強化。欧州がグローバルで最も急成長している地域と位置づけられています。食酢メーカーも「欧米」「アジア」「北米」の3エリア体制で現地食文化に根差した商品開発を進めています。

日本酒

2024年のEU・英国向け日本酒輸出は約27.2億円で前年比116.2%と過去最高を更新しました。2024年12月には「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、今後の認知度向上が期待されています。プレミアム酒へのシフトが加速しており、フランス・イタリア・ドイツではワインの代替としてのペアリング提案が進んでいます。

菓子・スナック

抹茶味・ゆず味など日本固有のフレーバーが欧州消費者の「冒険的消費」志向に合致し、菓子メーカーの欧州展開が広がっています。わさび味のポテトチップスで海外売上100億円を達成した中堅メーカーの事例もあり、大手は海外企業とのM&A・業務提携を通じてチャネルを確保する動きが見られます。

欧州向けOEMの動向

健康食品OEMメーカーによる欧州向け受託製造が増加傾向にあります。オーガニック・機能性食品分野での受託が多く、各国規制に対応した検査・認証取得の代行サービスも提供されています。ただし欧州向けOEMはNovel Food申請、添加物対応、残留農薬基準適合といった規制対応コストが高いため、参入障壁は他地域と比べて高い点に注意が必要です。OEM受託を検討する場合は、EU規制に精通したメーカーを選ぶことが成功の鍵になります。

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欧州の流通構造

ディストリビューター

欧州での日本食品流通は、専門ディストリビューター経由が基本です。1979年設立の最大手は欧州各国に拠点を持ち、日本食品の輸入・卸売を一手に担っています。スイス拠点の別の大手は1万社超のレストラン・小売に2,500以上のSKUを供給しています。デュッセルドルフとロンドンに拠点を持つ新興の日本食品専門卸も2017年の設立以降急成長しています。

小売チャネル

ドイツのEdeka(4,100店舗)やReweでは日本食材が一般棚に並ぶようになり、英国のTescoもアジア食品棚で醤油・麺類を常備しています。フランスのCarrefourも欧州各国で日本食材を取り扱っています。Amazon各国(.de, .fr, .co.uk)での販売も拡大しており、抹茶・醤油・スナック菓子が売れ筋カテゴリです。

輸出品目と成長トレンド

品目動向
日本酒EU・英国向け前年比116.2%で過去最高。ユネスコ登録が追い風
ホタテ貝前年比60.1%増。中国向け減少分の代替先として欧州が浮上
ソース混合調味料前年比14.2%増。現地料理へのフュージョン利用が拡大
緑茶・抹茶EPA関税撤廃が追い風。ただし残留農薬基準が課題
醤油安価な他国産との競合あり。品質差の説明が重要

展示会での商談のポイント

SIAL ParisやAnugaでの商談から取引成立までは、一般的に以下のプロセスをたどります。

  1. 事前準備: ターゲット顧客セグメントの特定、現地言語の製品資料・価格表の用意
  2. 展示会当日: バイヤーとの初回面談で製品紹介・試食提供。数量・価格・納品条件の具体的な協議
  3. フォローアップ: サンプル送付、規制対応の確認(Novel Food、添加物、残留農薬)、契約条件の詰め
  4. 取引開始: ディストリビューター経由で初回ロットを出荷。EU域内の物流拠点から各国に配送

バイヤーが重視するのは「高品質」だけでなく、現地消費者がどう使うかの具体的な提案です。EU認証(オーガニック、ハラール等)の取得状況、サステナブルなパッケージング、安定供給体制の有無も商談の成否を左右します。醤油のように安価な他国産が既に流通している品目は、品質・製法の差を丁寧に説明する必要があります。

展示会の全体スケジュールは食品展示会カレンダーで、出展費用は出展費用ガイドで確認できます。OEMメーカーの事前リサーチには食品OEMの窓口をご活用ください。

情報ソース

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この記事を書いた人

小島怜のアバター 小島怜 株式会社Agriture

株式会社Agriture CEO/食品OEMコンシェルジュ 乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業を手がける株式会社AgritureのCEO。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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