食品OEMを初めて依頼する際、製造先に「とりあえず見積もりをください」と伝えてしまい、あとから追加費用が発覚してトラブルになるケースは少なくありません。見積もり段階で必要情報を整理しておくことで、価格の妥当性や比較検討の精度が大きく変わります。
この記事では、OEM見積もりを依頼する際に押さえるべきチェック項目を、漏れなく・分かりやすく解説します。初回相談時や他社比較の参考にしてください。
なぜ「見積もりの精度」が重要なのか?
食品OEMは、商品完成までに多くの要素が絡み合うため、「ざっくり依頼」では正確なコスト把握が難しくなります。実際には、製造単価だけでなく、梱包・資材・開発費・運賃・法規対応費など、さまざまな要素が価格に影響します。
だからこそ、事前にチェックリストを使って情報を整理したうえで見積もりを依頼することが、トラブル回避と交渉力強化の第一歩です。
食品OEM見積もり時のチェックリスト10項目
ここでは、実務で必ず確認しておきたい10項目を整理して解説します。
1. 製造ロット(最小ロット・発注単位)
ポイント:
OEMメーカーごとに「最小ロット数(例:300個〜、20kg〜など)」が設定されており、ロットによって単価も変動します。
確認すべきこと:
- 最小ロットはどのくらいか
- ロット数が増えると単価はどの程度下がるか
- 初回とリピートでロット条件が変わるか
2. 単価(1個あたりの製品価格)
ポイント:
最も基本的な項目ですが、含まれている費用の範囲を明確にしないと、後で別請求が発生することがあります。
チェック項目:
- 単価に原材料費・加工費・包装費は含まれているか
- 表示ラベルや印刷代は別か
- ロットによる価格変動の幅は?
3. 梱包資材・出荷時の箱詰め費用
ポイント:
外装資材(ダンボール・緩衝材・個装袋など)は別途費用がかかるケースが多く、数量が多くなると意外に大きなコストになります。
確認すべき内容:
- 外箱・内袋・ラベル貼付などの梱包仕様とその費用
- 小分け対応の有無(セット詰めなど)
- パレット出荷/宅配便出荷など対応物流形態
4. パッケージ資材の手配可否
ポイント:
自社で手配するのか、OEM側に任せられるのかで段取り・コスト・リードタイムが大きく異なります。
確認すべきこと:
- OEMメーカー側で資材手配可能か(ラベル/袋/箱など)
- デザイン支援や表示内容の校正は含まれるか
- データ入稿の形式(AIデータ/PDFなど)
5. 開発・試作費用
ポイント:
初回のレシピ開発・試作に費用が発生することが多く、「初回無料」としている企業もあれば、有償のところもあります。
チェックすべき内容:
- 試作費はいくらか/何回まで対応可能か
- 試作品の納期と納品形態
- 試作の評価→本製造への条件(合格基準)
6. 法規対応・ラベル作成費
ポイント:
栄養成分表示・アレルゲン・原材料表記など、食品表示法・薬機法の対応コストが発生することがあります。
確認ポイント:
- 栄養成分の分析費用の有無
- 食品表示監修はOEMメーカーが対応してくれるか
- 法律改正時の表示修正費は別料金か
7. 配送料・納品形態
ポイント:
冷凍・冷蔵・常温によって配送コストが大きく異なるうえ、送料が含まれているかどうかも見積時に要確認です。
確認すべき点:
- 配送料は単価に含まれているか
- 納品場所(直送/自社倉庫/FBAなど)と対応可否
- 配送先複数拠点への仕分け対応の可否と費用
8. 支払い条件・請求サイクル
【チェック項目】
- 支払いサイト(納品後30日など)
- 銀行振込 or クレジット決済可否
- インボイス対応の有無
【補足】
「前金制」や「試作費のみ先払い」などのパターンもあります。資金繰りに影響する部分なので慎重に確認を。
9. 不良品対応と返品条件
【チェック項目】
- 規格外品の返品可否・条件
- 不良発生時の再製造 or 返金対応
- 消費者クレーム対応の分担
【補足】
初期段階では返品対応も柔軟でも、量産時には免責条項が強くなる場合も。書面や見積書備考欄に対応条件があるか確認してください。
10. 製造中止・契約終了時の取り決め
【チェック項目】
- 突然の製造終了時に在庫・資材の扱いは?
- 解約時の違約金やペナルティの発生有無
- 印刷資材の返却条件
【補足】
見積もり段階では見落としがちですが、「フェードアウト型取引」が発生したときに困るのがこの部分です。事前に確認を。
OEM見積もりは「費用」だけでなく「条件」で比較する
OEMメーカーを選定する際、どうしても価格に注目しがちですが、本当に重要なのは「その価格の内訳と前提条件」です。小ロットかつ高品質を求める場合、対応力のあるメーカーを見極めるには、見積もり段階での精度と丁寧さがカギになります。
ぜひ本記事のチェックリストを活用し、「あとで後悔しない見積もり取得」を実現してください。