「フードロス削減」「地産地消」「サステナブル」。食品業界においてこの数年、これらのキーワードが重要視されるようになった背景には、生産現場で大量に発生する“規格外野菜”の存在があります。
形やサイズが揃っていないだけで、流通に乗らない。農家の努力で育てられた作物が、見た目だけで破棄されている。この課題に対して、近年注目されているのが**「OEM(受託製造)」という手法を活用した加工商品開発**です。
本記事では、「規格外野菜とは何か」から、それをどう商品価値に転換できるのか、さらに規格外野菜・フルーツを活用した「OYAOYA」「梨からの手紙」の具体的な事例まで解説します。
規格外野菜とは?|「問題」ではなく「資源」になる時代へ
規格外野菜の定義とは
規格外野菜とは、市場の流通基準から外れた野菜や果物のことを指します。
以下のような理由で“B品”として扱われることが一般的です:
- サイズが基準より小さい・大きい
- 形が曲がっている・複数に分かれている
- 色むらや斑点がある
- 表皮に傷や凹みがある
- 収穫タイミングが早すぎる/遅すぎる
これらの野菜は、味や栄養には問題がないにもかかわらず、見た目だけの理由で市場出荷から外れ、廃棄または家畜飼料として処理されることが多くなっています。
日本国内における規格外野菜の廃棄実態
日本国内においては年間約180万トンもの規格外野菜が廃棄されて、フードロスを生んでいると言われています。しかしコロナ禍と同時にSDGsに注目されたことで、規格外野菜を活用する事例が増えています。
なぜ今、規格外野菜のOEM活用が注目されているのか?
サステナビリティ経営とSDGsへの対応
企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの取り組みが加速する中、「フードロス対策」「地域農業支援」「循環型モデル構築」など、環境・社会に配慮した商品づくりが求められています。
その中で、規格外野菜の活用は次のようなメリットがあります:
- 廃棄物の削減による環境負荷の低減
- 規格外品に価格を付けることで農家収益の向上
- 「社会的価値」を商品のブランド要素として訴求できる
OEMとの親和性が高い理由
OEM(Original Equipment Manufacturing)は、自社ブランドの製品を、製造設備を持つ外部メーカーに委託して作る仕組みです。
OEMでは、乾燥、粉末、ピューレ、レトルト、冷凍など様々な加工方法に対応でき、野菜の外見を問わず「味・機能性・栄養価」に着目した商品設計が可能です。つまり、規格外野菜を“素材として活かす”のに非常に適した手法だと言えます。
事例①:乾燥野菜ブランド「OYAOYA」によるOEM展開
京都発の乾燥野菜ブランド「OYAOYA」は、規格外の京野菜を中心に乾燥加工し、業務用から一般向けまで幅広く展開しているブランドです。運営は株式会社Agriture。
規格外野菜の活用方法
- 形が不揃いな人参・大根・ごぼうをスライスまたは千切りにして乾燥
- 皮に傷があるナスやかぼちゃも、加工段階で除去し、「乾燥に適した部位」のみ活用
- 小ぶりなトマトやオクラを丸ごと使用し、旨味を凝縮させた乾燥製品に変換
こうした素材は、見た目で価値が下がっていたものの、乾燥によって色・香り・味わいが際立つ素材に生まれ変わっています。
OEMとしての活用例
- 飲食店向けに、野菜出汁用の乾燥野菜ミックスを小ロットで提供(100g〜)
- カフェ向けに、野菜の色を活かしたスムージーパウダーのOEM供給
- ペットフードメーカー向けに、無添加・粉末化された京野菜原料として供給
OYAOYAでは、農家とのネットワーク・乾燥ノウハウ・OEM対応体制をすべて自社内に保有しており、企画段階からの共同開発にも柔軟に対応しています。
事例②:「梨からの手紙」に見る、ストーリー型ドライフルーツOEM
「梨からの手紙」は、京都府産の“ゴールド二十世紀”という希少な青梨を使用し、ドライフルーツとして商品化しているブランドです。こちらもAgritureが展開しています。
規格外果実の活用ポイント
- 木から落ちて表皮にキズがあるもの、小玉で流通に乗らないものなどを選別
- スライス・低温乾燥することで、甘味・酸味・香りを凝縮し、加工
- 皮付きのまま食べられるように品種と乾燥温度を調整し、栄養と見た目を両立
OEM事例としての展開
- 洋菓子レシピも開発しそのまま食べる以外の選択肢も提示
- 日本茶専門店向けに、茶葉にブレンドできるドライフルーツ素材としてOEM供給
- ホテル・旅館のウェルカムギフトとして、規格外活用+京都産×デザイン性のストーリー訴求
「梨からの手紙」は、“規格外=もったいない”を、“規格外=特別な味わい”に昇華させる企画型OEMの事例です。
規格外野菜を活用したOEMの仕組みと流れ
ここでは、OEMを通じて規格外野菜を活かした商品開発をするための流れを、簡単にまとめます。
① 原料選定
- 規格外野菜の種類・数量・収穫時期を確認
- 形状・水分量・甘味・香りなど加工適性も評価
② 加工方法の選定
- 熱風乾燥/冷風乾燥/冷凍/ピューレ化/粉末化など
- 最終商品に応じて加工方法を柔軟に設計
③ OEM設計と試作
- 使用目的・販売チャネルに応じた仕様を設計
- 試作段階で味・見た目・保存性を確認
④ 包装・表示・契約
- OEM側で資材調達可否を確認
- 表示義務(栄養・アレルゲン)への対応
- 契約書・ロット数・納期・表示確認などを事前整理
⑤ 販売・納品
- ギフト/飲食/業務用など販売先に応じた形で納品
- 規格外利用の背景を伝えるストーリー性が重要
規格外野菜を活用し、食の未来を作る商品開発を
規格外野菜をOEMで製品化することは、サステナビリティ・コスト合理化・ブランド価値の創出という三拍子がそろった施策です。 “もったいない”では終わらせず、食の未来につなげる取り組みとして、今後ますます注目されるでしょう。
京都のブランド「OYAOYA」「梨からの手紙」のように、地域性・加工技術・ストーリー性を融合したOEMモデルは、他地域でも展開可能です。自社商品の開発やCSR施策として、規格外野菜のOEMを検討してみてはいかがでしょうか?