ドッグフードOEM|原材料・粒設計からメーカー選びまで
自社ブランドのドッグフードをOEMで作りたい。そう考えたとき、最初に決めるべきは「どんな犬に、どんなフードを届けるか」です。チキンベースか鹿肉か、ドライかウェットか、小型犬向けか全犬種対応か。この設計の段階でフードの性格が決まり、売れるかどうかの8割が決まります。
この記事では、原材料の選定から粒サイズの設計、犬の嗜好性テスト、製造フロー、費用、メーカー選びまで、ドッグフードOEMの実践的な情報をまとめました。
自社ブランドのドッグフードで何を作るか決める
OEMメーカーに相談する前に、自社のフードのコンセプトを固めておく必要があります。「とりあえずドッグフードを作りたい」では、メーカーからの提案も曖昧になり、結果として他ブランドと似たような製品が出来上がります。
主原料で決まるフードの性格
ドッグフードの主原料は製品の性格そのものです。どの肉や魚を第一原料にするかで、栄養プロファイル、ターゲットとなる犬、価格帯、ブランドの立ち位置が変わります。
| 主原料 | タンパク質・脂質の特徴 | 向いている犬 | OEM設計のポイント |
|---|---|---|---|
| チキン(鶏肉) | 高タンパク・低脂質。アミノ酸バランスが良い | 全犬種・全年齢の万能型 | 調達が安定しコストを抑えやすい。国産鶏肉で差別化可能 |
| 鹿肉(ベニソン) | 高タンパク・超低脂質。鉄分が豊富 | 肥満傾向の犬、アレルギー対応 | 新奇タンパクとしてアレルギー対策に有効。調達量に限りあり |
| 馬肉 | 高タンパク・低カロリー。グリコーゲンが豊富 | シニア犬、ダイエット中の犬 | 国産馬肉は高単価。熊本産が主産地 |
| 魚(サーモン・マグロ等) | EPA・DHAが豊富。オメガ3脂肪酸の天然供給源 | 皮膚・被毛トラブルのある犬 | 漁獲量で価格変動あり。複数魚種の併用でリスク分散 |
| ラム(羊肉) | アミノ酸バランスが良い。亜鉛・鉄分が豊富 | アレルギー対応、食の細い犬 | 輸入依存度が高くコスト高め。ニュージーランド産が主流 |
最近のトレンドとして、鹿肉や馬肉といった「新奇タンパク」の人気が高まっています。チキンやビーフにアレルギーを持つ犬が増えており、これまで食べたことのないタンパク源はアレルゲンになりにくいという考え方が飼い主に浸透しています。ただし、鹿肉や馬肉は調達の安定性とコストに課題があるため、メインにする場合は原料の供給体制をメーカーに確認しておくことが必要です。
ドライ・ウェット・おやつ、製品タイプごとの特徴と選び方
製品タイプの選択は、ターゲットとなる飼い主の購買行動と直結します。
ドライフード(水分10%以下)は最も流通量が多く、日常の主食として使用されます。保存性が高く、1kgあたりの単価も抑えられるため、リピート購入されやすい製品タイプです。OEM製造では最小ロットが200〜500kgと大きくなりがちですが、小ロット対応のメーカーであれば10kgから製造可能な場合もあります。
ウェットフード(水分75%以上)はパウチや缶詰で提供され、嗜好性が高いのが特徴です。食が細い犬やシニア犬の飼い主に選ばれやすく、ドライフードのトッピングとしての需要もあります。ウェットフードから始めて、ブランドの認知が広がった段階でドライフードに展開する戦略も有効です。
おやつ・スナックは「一般食」に分類され、総合栄養食ほど厳密な栄養基準を満たす必要がありません。ジャーキー、ボーロ、歯磨きガムなどフォーマットの自由度が高く、小ロット・低コストで参入しやすいカテゴリです。ブランドの入口商品として活用し、主食フードへの導線を作る企業が増えています。
子犬・成犬・シニア、ライフステージ別の栄養設計
AAFCO(米国飼料検査官協会)はライフステージ別に栄養基準を設定しています。「総合栄養食」として販売するにはこの基準の充足が必須です。
| 栄養素 | 子犬(Growth) | 成犬(Maintenance) | 設計上の注意点 |
|---|---|---|---|
| タンパク質 | 22.5%以上 | 18%以上 | プレミアムフードは30%以上が主流。18%ギリギリでは差別化困難 |
| 脂肪 | 8.5%以上 | 5.5%以上 | 低すぎると皮膚・被毛に影響。高すぎると肥満リスク |
| カルシウム | 1.2%以上 | 0.5%以上 | 子犬用は骨格形成のために高めに設定 |
| オメガ6(リノール酸) | 1.3%以上 | 1.1%以上 | 皮膚・被毛の健康維持に直結 |
| オメガ3 | 合計0.13%以上 | 合計0.13%以上 | EPA・DHAはサーモンオイル等から供給 |
全年齢対応(オールステージ)で設計する場合は、子犬の基準値をクリアする必要があります。成犬用よりも高タンパク・高カロリーの設計になるため、肥満傾向のある成犬には給与量の調整が必要になることも、商品説明に記載しておくべきポイントです。
犬が食べるフードを設計する
栄養学的に完璧なフードでも、犬が食べなければ商品として成立しません。飼い主がドッグフード選びで最も重視するポイントは「食いつきの良さ」(23.4%)で、「原材料の安全性」や「ブランドの信頼性」を上回っています。嗜好性の設計はレシピ開発の最重要テーマです。
犬は「匂い」で食べ物を選ぶ
犬の嗅覚は人間の1万〜10万倍と言われており、フードの嗜好性は匂いでほぼ決まります。犬はアミノ酸に含まれる旨味を強く感じ取る能力があり、動物性タンパク質の含有量が高いフードほど食いつきが良くなる傾向があります。
OEM開発では、主原料の動物性タンパク比率を高めることが嗜好性向上の最も確実な方法です。生肉の使用比率を40〜50%以上にする、鶏レバーやチーズパウダーなど犬が好む天然フレーバー源を副原料に加える、フードの温度で香りが立ちやすい粒形状にするといった工夫が有効です。
粒サイズ・形状は犬種とサイズで変える
日本ではチワワ・トイプードル・ミニチュアダックスフンドなどの小型犬が圧倒的に多く、国産ドッグフードの多くは小粒設計になっています。粒サイズの目安は以下のとおりです。
- 超小型犬・小型犬(〜10kg): 直径5〜8mm
- 中型犬(10〜25kg): 直径8〜12mm
- 大型犬(25kg〜): 直径12〜16mm
粒の形状も食いつきに影響します。円盤型は小型犬が前歯でかじりやすく、球形は大型犬が丸呑みしやすいという特性があります。試作段階で複数のサイズ・形状を作り、実際の犬に食べさせて検証することが不可欠です。
オイルコーティングの有無をどう判断するか
市販のドライフードの多くは、粒の表面に動物性油脂をコーティングして嗜好性を高めています。オイルコーティングにより匂いと食いつきは向上しますが、油脂の酸化による品質劣化や、開封後の保存期間の短縮というデメリットがあります。
近年は「ノンオイルコーティング」を売りにする製品が増えています。飼い主の間で「オイルコーティング=不自然」という認識が広がっているためです。ノンオイルコーティングを選ぶ場合は、原材料自体の香りで嗜好性を担保する設計が求められます。具体的には、生肉の配合率を上げる、鰹節やチーズなど天然素材の粉末を練り込むといった方法で対応します。
どちらを選ぶかは、ターゲットとする飼い主の価値観に合わせて判断してください。健康志向の強い層を狙うならノンオイルコーティング、食いつきの良さを最優先にするならオイルコーティングが適しています。
ドッグフードOEMの製造フローと開発期間
ドッグフードOEMの製造は、初期相談から納品まで通常3〜6ヶ月かかります。嗜好性テストの回数やレシピ調整によってはさらに延びるため、余裕を持ったスケジュールを組んでください。
初期相談で決めておくべき6項目
- ターゲット犬種・サイズ・ライフステージ
- 製品タイプ(ドライ・ウェット・おやつ)と栄養カテゴリ(総合栄養食 or 一般食)
- 主原料のコンセプトと差別化ポイント(グレインフリー・無添加・国産など)
- 想定販売価格帯と販路(EC・ペットショップ・動物病院・サブスクリプション)
- 初回ロット数と月間の予測販売数
- パッケージの仕様(袋のサイズ・素材・デザインの方向性)
複数のメーカーに同じ条件で相談し、提案内容を比較することが重要です。OEM相見積もりの取り方と比較のコツを参考にしてください。
試作・嗜好性テスト・レシピ確定
試作は通常2〜3回のサイクルで行います。1回目の試作で配合バランスと粒の基本形状を確認し、2回目で嗜好性テストの結果を反映した調整を行い、3回目で最終確認するのが標準的な流れです。
嗜好性テストでは、複数の犬種・サイズ・年齢の犬に試作品を食べさせます。食いつきだけでなく、数週間にわたって便の状態、被毛の変化、体重の推移も観察して、栄養吸収と健康面での影響も検証します。この工程を省略すると、発売後に「うちの犬は食べない」というレビューが並ぶリスクが高くなります。
品質検査から量産・納品まで
レシピ確定後は品質検査を経て量産に入ります。ペットフード工場で実施される検査は官能検査(原料の色・匂い確認)、栄養成分検査(タンパク質・脂質・粗繊維・灰分・水分の測定)、粒の物性検査(サイズ・硬さの均一性)、安全性検査(サルモネラ菌・アフラトキシン等の有害物質検出)の4種類です。
パッケージ資材の納品も量産と同期させる必要があります。OEM初回ロットの決め方で発注量の判断基準を確認してください。
費用とロット数の目安
製品タイプ別の費用テーブル
| 費用項目 | ドライフード | ウェット(パウチ) | おやつ |
|---|---|---|---|
| レシピ開発費 | 10万〜30万円 | 10万〜30万円 | 5万〜15万円 |
| 試作費(2〜3回) | 3万〜10万円/回 | 5万〜15万円/回 | 2万〜5万円/回 |
| 栄養成分分析 | 3万〜5万円 | 3万〜5万円 | 3万〜5万円 |
| 最小ロット目安 | 200〜500kg | 1,000〜3,000個 | 500〜1,000個 |
| 製造単価 | 200〜500円/kg | 80〜200円/個 | 50〜150円/個 |
上記は目安であり、グレインフリーや鹿肉・馬肉など高単価の原材料を使用する場合は製造コストが1.5〜2倍になるケースもあります。OEM原価計算シートの作り方を参考に、複数メーカーから見積もりを取得して比較してください。
小ロットで始めてテスト販売する方法
小ロット対応のメーカーでは10kgからドライフードの生産が可能な会社もあります。コストは割高ですが、テスト販売で市場の反応を確認できるメリットは大きいです。
テスト販売の販路として有効なのは、ECサイト(自社サイト・Amazon・楽天)、クラウドファンディング、ペット系のサブスクリプションサービスです。特にクラウドファンディングは、商品コンセプトへの共感を集めながら初期ロットの資金を確保できるため、新規ブランドの立ち上げとの相性が良いです。チキン・鹿肉・魚など複数フレーバーを小ロットで製造し、実売データに基づいて主力商品を絞り込む方法が堅実です。
ドッグフードOEM対応メーカー一覧
食品OEMの窓口に掲載されているメーカーの中から、ドッグフードOEMに対応している企業を紹介します。
| 会社名 | 所在地 | 対応製品 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| FANDDF & Co. | 埼玉県入間市 | ドッグフード・ペットフード全般 | ペット栄養管理士による設計、無添加対応、10kg〜小ロット可 |
| 株式会社プレシア | 神奈川県(製造:熊本県) | ドッグフード・畜産加工品 | 馬肉100%の無添加フード製造実績、高品質な原料調達力 |
| 株式会社ユーエイエム | 福岡県福岡市 | ペットフード関連・食品加工全般 | 量販店PB製造の実績、カット肉原料の安定供給 |
| 株式会社STIサンヨー | 静岡県焼津市 | 缶詰・レトルトパウチ・ペットフード | 水産加工の老舗、大手OEM実績豊富、短納期対応 |
| 日華フーズ株式会社 | 北海道函館市 | ペットフード・水産加工品 | ヒューマングレード・無添加のペットフード開発に対応 |
より多くのメーカー情報は、食品OEMの窓口の「ペットフードOEMとは?費用相場からメーカー比較まで徹底解説」で紹介しています。OEM工場見学チェックポイント10選も参考にして、品質管理体制を直接確認することをおすすめします。
失敗しないための注意点
ペットフード安全法と表示義務
日本でドッグフードを製造・販売するには「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)の遵守が必須です。製造業者は農林水産大臣・環境大臣への届出と帳簿の備付けが義務付けられています。OEMの場合、製造はメーカー側の届出でカバーできますが、販売者としての届出が別途必要になるケースもあるため、管轄の農政局に事前に確認してください。
パッケージへの表示義務は名称、原材料名、賞味期限、原産国名、事業者名・住所の5項目です。おやつやスナック類も同じ規制の対象です。詳しくは食品OEM契約書で確認すべき7つのチェックポイントを参考にしてください。
レシピ開発でよくある3つの失敗
ケース1:タンパク質21%で「高タンパク」と謳って炎上
あるD2Cブランドが脂質8%・タンパク質21%の設計で「高タンパクドッグフード」として販売しました。AAFCO基準では成犬のタンパク質最低値は18%であり、21%は基準をわずかに超えた程度です。競合のプレミアムフードがタンパク質30〜40%で設計されている中、この数値で「高タンパク」を名乗ったことで、ペットフードに詳しい飼い主からSNSで指摘が相次ぎました。原材料のグレードだけでなく、配合比率が競合と比べてどの水準にあるかを客観的に把握した上で、適切な訴求表現を選ぶことが重要です。
ケース2:無添加にこだわりすぎて食いつきが40%以下に
「完全無添加」を売りにするために動物性油脂のコーティングと香料を全て除去した結果、嗜好性テストで犬の食いつき率が40%以下まで落ちました。愛犬の健康を考える飼い主のニーズに応えたい気持ちは正しいですが、犬が食べないフードは商品になりません。対策として、生肉の配合比率を50%以上に引き上げ、鰹節粉末や鶏レバーパウダーなど天然のフレーバー源を加えることで、無添加を維持しつつ嗜好性を回復させた事例があります。
ケース3:原材料の変更を工場が独断で実施
品質管理をOEMメーカーに全て任せていたブランドで、ある時期からフードの色味と匂いが変わったという飼い主からのクレームが発生。原因は工場が原材料の調達先を独断で切り替えていたことでした。ブランドオーナーとして、原材料変更時の事前承認フロー、定期的な抜き打ち検査、ロットごとのサンプル保管を契約に明記しておくべきです。品質管理の最終責任は工場ではなくブランドオーナーにあります。
OEM契約で確認すべき条項
- 最小ロット数と増産・減産時の対応条件
- 原材料の変更に関する事前承認フロー
- 不良品発生時の費用負担と対応フロー
- レシピの知的財産権の帰属
- リコール発生時の責任分担
- 秘密保持条項(NDA)の範囲
よくある質問
Q1. ドッグフードOEMの最小ロットはどのくらい?
ドライフードは200〜500kg、ウェットフードは1,000〜3,000個、おやつは500〜1,000個が一般的です。小ロット対応のメーカーでは10kgから製造可能な会社もあります。おやつから始めてブランドの認知を広げ、主食フードに展開するのも有効な戦略です。
Q2. 開発から販売開始までの期間は?
初回相談から商品の納品まで通常3〜6ヶ月です。嗜好性テストを複数回実施する場合や、AAFCO基準に合わせたレシピ再調整が必要な場合はさらに1〜2ヶ月延びることがあります。
Q3. グレインフリーや無添加のドッグフードをOEMで作れる?
対応可能なメーカーは増えています。グレインフリーでは穀物の代替にサツマイモ・タピオカ・エンドウ豆を使用しますが、調達の安定性を事前に確認してください。「無添加」の定義はメーカーごとに異なるため、何を無添加とするか(保存料のみ or 着色料・香料・酸化防止剤も含む)を具体的にすり合わせることが大切です。
Q4. 犬用と猫用を同じメーカーや株式会社に依頼できる?
多くのペットフードOEMメーカーは犬猫両方に対応しています。ただし犬と猫では必須栄養素が異なり(猫はタウリン・アラキドン酸が必須)、それぞれ専用のレシピ設計が必要です。猫用フードについてはキャットフードOEM|製造の流れ・費用・メーカーの選び方で詳しく解説しています。
Q5. 国産ドッグフードOEMのメリットは?
原材料のトレーサビリティが確保しやすく、飼い主の「国産=安心」というニーズに応えられます。輸送距離が短いため原材料の鮮度維持にも有利です。コストは海外製造より高くなる傾向がありますが、「国産・無添加・ヒューマングレード」の組み合わせはプレミアム価格帯での販売を可能にします。
Q6. ペットフード製造に特別な届出は必要?
ペットフード安全法に基づき、製造業者は農林水産大臣と環境大臣への届出が必要です。OEMの場合は製造側がこの届出を行いますが、販売者としての届出が別途必要な場合もあります。管轄の農政局に事前確認してください。

自身もOEMメーカーである知見をもとに、OEMメーカーの選定方法、費用、流れを徹底的に解説しています。
まとめ
ドッグフードOEMで成功するかどうかは、製品コンセプトの設計段階で決まります。どの主原料を選び、どの犬種・ライフステージをターゲットにし、粒のサイズや嗜好性をどう設計するか。この段階で他社との違いを明確にできれば、OEMという製造方式は自社ブランド構築の強力な手段になります。
メーカー選びではAAFCO基準への対応力、嗜好性テストの実施体制、原材料のトレーサビリティを軸に比較してください。小ロットからテスト販売を行い、愛犬の食いつきと飼い主の反応を確認しながらスケールアップする進め方がリスクを最小限に抑えます。
ペットフードOEM全般の情報はペットフードOEMとは?費用相場からメーカー比較まで徹底解説で、猫用フードについてはキャットフードOEM|製造の流れ・費用・メーカーの選び方でまとめています。


