食品OEM開業に必要な届出・許可を徹底解説【一覧付き】
「食品OEMを始めたいけど、どんな許可が必要かわからない」
そんな相談が、毎週何件も届きます。食品ビジネスの許認可は複雑で、製造形態や販売方法によって必要な手続きがまったく変わります。調べても情報が散在していて、何が必要なのか整理できないまま時間だけ過ぎてしまう——そうなる前に、この記事で一気に整理してしまいましょう。
製造形態(自社製造・委託製造)別、販売方法(EC・実店舗・輸出)別に必要な届出・許可を一覧で整理します。保健所への事前相談から書類準備、施設基準のチェックポイントまで、実務担当者が迷わないよう順を追って解説します。
この記事でわかること
- 食品衛生法に基づく「営業届出」と「営業許可」の違い
- 製造形態(自社製造・委託製造)別の必要手続き
- 販売方法(EC・実店舗・輸出)別の追加手続き
- 申請から取得までのスケジュール感と費用の目安
- 保健所相談でよくある落とし穴
「届出」と「許可」はどう違う?まず基本から整理する
食品OEM事業で最初に押さえておくべきなのが、「届出」と「許可」の違いです。ここを混同すると申請漏れや事業開始の遅延に直結するので、しっかり確認しておきましょう。
2021年6月の食品衛生法改正で、以前は「許可不要」だった多くの業種が「営業届出」の対象になりました。届出なしでは営業できない業種が大幅に増えた、という点が重要です。
| 区分 | 内容 | 主な対象業種 |
|---|---|---|
| 営業許可 | 施設基準の審査あり。保健所の検査が必要 | 菓子製造、食肉処理、乳製品製造など32業種 |
| 営業届出 | 届出のみ。施設基準の審査なし | 弁当販売、野菜果物販売、食料品小売など |
| 届出不要 | 手続き不要 | 農家の直売所、食品の輸入のみなど |
食品OEM事業で最も関係するのは「営業許可」です。製品を製造する工場が、製造する品目に応じた許可を取得している必要があります。
製造する食品カテゴリ別・必要な営業許可一覧
食品OEMで扱える製品の幅は広い分、品目ごとに必要な許可も異なります。「このジャンルの商品を作りたい」という段階で、対応する許可を把握しておくことがスタートラインです。
主要な加工食品カテゴリと必要な許可
| 製品カテゴリ | 必要な営業許可 | 主な施設基準 |
|---|---|---|
| クッキー・焼き菓子 | 菓子製造業 | 製造室・包装室の分離が必要 |
| ジャム・缶詰 | 缶詰・瓶詰食品製造業 | 密封設備、加熱処理設備 |
| 清涼飲料水 | 清涼飲料水製造業 | 充填設備、フィルター設備 |
| 食肉加工品(ハムなど) | 食肉製品製造業 | 冷蔵設備、殺菌設備 |
| アイスクリーム | アイスクリーム類製造業 | 冷凍設備、充填設備 |
| 豆腐・納豆 | 豆腐製造業・納豆製造業 | 凝固設備、容器洗浄設備 |
| 健康食品(錠剤・カプセル) | 食品製造業(菓子製造業含む) | クリーンルーム推奨 |
見落としやすいのが、複数品目を製造する場合に複数の許可が必要になる点です。例えば焼き菓子とジャムを同じ工場で製造するなら、「菓子製造業」と「缶詰・瓶詰食品製造業」の両方が求められます。
健康食品・サプリメントの場合は追加届出も必要
健康食品やサプリメントのOEMでは、製造許可に加えて、機能性や特定成分の訴求に応じた届出が別途必要です。
| 種別 | 手続き | 審査期間の目安 |
|---|---|---|
| 機能性表示食品 | 消費者庁への届出 | 最短60日 |
| 特定保健用食品(トクホ) | 消費者庁の審査・許可 | 1〜2年 |
| 栄養機能食品 | 届出不要(ただし基準値内での表示が必要) | — |
自社製造 vs 委託製造——手続きの違いを正確に把握する
「自社工場を持つ」か「既存工場に委託する」かで、手続きの範囲はまったく変わります。ここを曖昧にしたまま進めると、想定外のコストや時間ロスにつながります。
自社工場で製造する場合
すべての許可・届出を自社で取得・管理します。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 製造品目の確定 | 必要な許可種別を特定 | 複数品目は複数許可が必要な場合も |
| 2. 保健所への事前相談 | 施設基準・図面の事前確認 | 着工前に必ず実施(最重要) |
| 3. 施設設計・建設 | 施設基準に適合した設計 | 相談後に着工することで手戻りを防ぐ |
| 4. 申請書類の準備 | 施設平面図・設備リストなど | 専門家への確認を推奨 |
| 5. 保健所検査 | 施設検査・書類審査 | 平均2〜4週間で許可証交付 |
事前相談をスキップして施設完成後に「この設備では基準を満たせない」と指摘されるケースは少なくありません。着工前の保健所相談は、絶対に省略しないでください。
委託製造(OEM)を活用する場合
委託先工場がすでに必要な許可を保有していれば、依頼元が取得すべき許可は販売形態に応じたものだけで済みます。これが食品OEM活用の最大のメリットのひとつです。
| 役割 | 必要な手続き |
|---|---|
| 委託先工場(製造者) | 製造に必要な営業許可(すべて) |
| 依頼元(販売者) | 食品表示の作成・確認、販売に必要な届出 |
依頼元として必ず実施すべきは、委託先工場の許可証コピーを入手・保管することです。許可の有効期限(原則5年ごとの更新が必要)も合わせて確認しておきましょう。
販売方法別・追加で必要な手続きを確認する
製造許可を取得したとしても、販売方法によっては別の手続きが発生します。製造側の準備が整ったタイミングで見落とされやすいポイントなので、販売計画と並行して確認しておきましょう。
ECサイト(オンライン販売)の場合
通常の食品販売であれば特別な届出は不要ですが、以下のケースでは追加手続きが必要です。
| 販売品目 | 必要な届出・許可 | 申請先 |
|---|---|---|
| 酒類(ビール・ワインなど) | 通信販売酒類小売業免許 | 税務署 |
| 機能性表示食品 | 消費者庁への届出 | 消費者庁 |
| 輸入食品の販売 | 食品輸入届出 | 検疫所 |
| 特定原材料のアレルゲン | 表示義務(法的要件) | — |
輸出を行う場合
海外展開を視野に入れているなら、輸出先国の規制確認が不可欠です。アメリカへの輸出ではFDA登録(Food Facility Registration)が必要で、登録自体は無料ですが2年ごとの更新(バイエニアル登録)が求められます。EU向けでは、HACCP対応の証明が必要になるケースが多いので、早めの準備が肝心です。
申請から取得までのスケジュールと費用の目安
「いつまでに申請すれば販売開始に間に合うか?」——実務担当者が最も気になるのはここです。スケジュールを把握した上で逆算して動くことが、プロジェクト遅延を防ぐ最短ルートです。
標準的なスケジュール
| フェーズ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 事前相談 | 保健所への相談・施設基準の確認 | 1〜2週間 |
| 施設準備 | 施設の改修・設備導入 | 1〜3ヶ月 |
| 申請書類の準備 | 施設平面図・設備リストなどの作成 | 1〜2週間 |
| 保健所検査 | 施設検査・書類審査 | 1〜2週間 |
| 許可証交付 | 審査合格後に交付 | 申請から2〜4週間 |
合計で最低2〜4ヶ月は確保しておくのが現実的な目安です。施設の新設や大規模改修が必要な場合は、さらに余裕を持って計画してください。
主な費用の目安
| 手続き | 費用の目安 |
|---|---|
| 営業許可申請手数料 | 1万5,000〜2万円程度(自治体により異なる) |
| 行政書士への代行依頼 | 5万〜15万円程度 |
| 機能性表示食品の届出(専門家依頼) | 30万〜100万円程度 |
| FDA登録(アメリカ輸出) | 無料(更新も無料) |
まとめ:食品OEM事業の許可取得は「早め・正確に」が鉄則
食品OEM事業に必要な届出・許可を整理すると、押さえるべきポイントは5つに絞られます。
- 製造品目によって「営業許可」の種別が異なる
- 委託製造なら依頼元の許可取得負担は軽減されるが、委託先の許可確認は必須
- 販売方法(EC・輸出・酒類)によって追加手続きが発生する
- 申請から取得まで最低2〜4ヶ月のリードタイムを見ておく
- 保健所への事前相談は着工前に必ず実施する
許認可対応を後回しにすると、そのままプロジェクト全体のスケジュールを圧迫します。「まず何が必要か」を早い段階で整理し、行政書士や食品衛生コンサルタントへの相談も選択肢に入れながら進めましょう。
よくある質問
Q1: 食品OEM事業を始めるにあたって、最初に何をすればよいですか?
A1: まず製造する食品カテゴリを確定させ、必要な営業許可の種別を特定することが最初のステップです。その後、製造施設の所在地を管轄する保健所に事前相談の予約を入れましょう。着工前の相談が最も重要なポイントで、これをスキップすると施設完成後に手戻りが発生するリスクがあります。
Q2: 委託製造(OEM)を利用する場合、依頼元は営業許可を取得する必要がありますか?
A2: 製造を委託先に任せる場合、製造に必要な営業許可は委託先工場が保有していれば十分です。ただし依頼元は、委託先の許可証のコピーを入手・保管し、有効期限(原則5年)の管理を行う必要があります。
Q3: 健康食品を「機能性表示食品」として販売したい場合、どんな手続きが必要ですか?
A3: 消費者庁への届出が必要です。科学的根拠となる論文やシステマティックレビューの準備が必要なため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。届出受理まで最短60日ほどかかります。
Q4: ECサイトで食品を販売する場合、特別な許可は必要ですか?
A4: 通常の食品の通販販売には特別な許可は不要ですが、酒類を販売する場合は「通信販売酒類小売業免許」の取得(税務署への申請)が必要です。また輸入食品を販売する場合は検疫所への届出が必要になります。
Q5: 営業許可の有効期限と更新について教えてください。
A5: 食品営業許可の有効期限は原則5年間です(業種・自治体によって異なる場合があります)。期限切れのまま営業を続けると無許可営業となるため、更新期限の管理を徹底してください。更新申請は期限の30日〜3ヶ月前が目安です。
Q6: HACCPとは何ですか?食品OEM事業者も対応が必要ですか?
A6: HACCPとは食品の安全性を確保するための衛生管理手法です。2021年6月から日本国内のすべての食品事業者に、HACCPに沿った衛生管理の実施が義務化されています。食品OEM事業者も例外ではなく、衛生管理計画の作成と記録の保管が求められます。


