MYPLATEがIP立体食品の受託開発を強化——「どれも同じ顔」を阻む金型補正と手作業のばらつきを判定基準で平準化
株式会社MYPLATE(東京都渋谷区、代表取締役:川端史紀)は2026年8月10日、キャラクターやIPを立体的な食品として商品化する食品開発支援事業を強化すると発表した。企画・コンセプト設計から造形、味の設計、量産化、品質管理までを一貫して請け負う体制で、スポーツチーム・IPホルダー・自治体を対象に展開する。
あわせて第1号事例として公開されたのが、福岡ソフトバンクホークスから受託して開発したオリジナル豚まん「バリカタ君豚まん」だ。球団マスコットの顔を立体で再現した商品で、2026年7月1日に販売を開始している。同社はこのプロジェクトで直面した「量産すると顔が変わる」という問題と、それを収束させた手順まで公表した。受託側から読むと、IP案件の見積もりと工程設計にそのまま跳ね返る内容が並んでいる。
受託範囲は造形・味・量産・品質管理の一貫支援
MYPLATEは健康食・冷凍弁当の企画製造・販売と、食品プロデュース・OEM/PB支援事業の両方を手がける。後者にはPB商品開発や、地域資源・IPコンテンツを使った商品開発が含まれる。今回強化するのは後者のうち、平面のキャラクターを食品の形そのもので再現する領域だ。
パッケージにイラストを刷る、既存商品にキャラクターを乗せるといった手法とは切り分けている。造形の設計から型の製造までを一貫して引き受け、量産と品質管理の仕組みまで含めて納品する形を取る。IPホルダー側は、造形の再現度と量産時の品質管理を同じ相手に委ねられる座組みになる。
手作業のパーツ配置がそろわない——第1号事例で最初に出た壁
バリカタ君は福岡ソフトバンクホークスのマスコットで、リーゼントヘアとポップな表情が特徴だ。豚まんではこの顔を、目・耳・鼻・リーゼント・ほっぺのうずまきといったパーツごとに立体で組み上げている。
最初の壁は、平面で成立していたパーツ配置が立体にすると別の印象になることだった。加えて各パーツは手作業で配置するため、一つひとつに微妙なばらつきが出る。キャラクター商品は、どれを手に取っても同じ顔に見えなければ商品として成り立たない。同社は3Dプリンターで型をつくりながら試作を重ね、途中で手作業のばらつきを吸収する狙いからデザインを「サングラスありVer.」へ変更し、5月中旬に味と見た目の仮承認を得ている。
ステンレス金型を起こした段階で顔が変わった
問題が表面化したのは、仮承認のあと量産用のステンレス金型に移した段階だった。生地の型抜けを良くするための補正によってサングラスの輪郭が丸みを帯び、中央の間隔が詰まった。承認を得た顔とは印象の異なるものが上がってきたことになる。手作業によるパーツ配置の個体差も重なり、完全に同一の商品を連続して製造することは難しいという現実に突き当たった。
試作の型と量産の型で出来上がりがずれること自体は、受託加工では起こりうる話だ。ただIP案件の場合、そのずれが「似ていない」という監修側の差し戻しにつながりやすい。同社は造形のクオリティと冷凍保存時の安全性検証を優先し、当初予定していた5月下旬の発売を7月1日へ延期する判断を取っている。
「らしさ」を数値と図に置き換えて現場に渡す
収束のために同社が取った方法は、感覚で共有されていた「バリカタ君らしさ」を数値とビジュアルで定義し直すことだった。「パーツを全体的に上に寄せる」「リーゼントの太さを1.5〜2倍にする」といった修正の方向づけを、口頭の指示で終わらせず寸法と倍率、図に落として渡している。
さらに、どこまでが出荷可能でどこからが不可かを分ける「OK/NG判定基準マニュアル」を作成し、製造現場と共有した。金型も再現性と量産性の2軸で設計を見直している。熟練職人の手作業に依存していた工程を、共有可能な判定基準によって平準化する。これが今回のプロジェクトで確立した進め方だ。
商品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | バリカタ君豚まん |
| 価格 | 780円(税込) |
| 企画・開発 | 株式会社MYPLATE |
| オフィシャル商品 | 福岡ソフトバンクホークス株式会社 |
| 販売場所 | みずほPayPayドーム福岡内3か所(1ゲート「コカ・コーラ」/3ゲート「ホークスカフェ1」/7ゲート「スタジアム横丁」) |
| 販売期間 | 2026年7月1日〜 |
| 味づくり | 豚肉ベースの餡にねぎの甘みと生姜の風味。冷めても味が落ちにくい配合 |
IP案件を受けるときに効いてくる論点
ここからは食品OEMの窓口編集部の見立てになる。今回公開された工程は、キャラクター食品の引き合いを受ける工場にとって、見積もり項目と承認フローの棚卸しに使える。
第一に、試作承認と量産承認を分けて握っておくこと。3Dプリンターで起こした型で通した造形が、ステンレス金型の補正で変わる前提を先に共有しておけば、今回のような差し戻しを納期リスクとして織り込める。
第二に、合否基準を誰がどう決めるかの線引きだ。IPホルダーの主観で「似ていない」と判断されると、工程のどこを直せばよいかが現場に落ちない。数値と図に落とした判定基準を先につくって承認を取り付けておけば、手直しの範囲を限定できる。
第三に納品物の範囲で、造形と味だけでなく判定基準の整備と現場への共有まで請け負うかどうかで、見積もりの立て方が変わる。
見積もり段階で先に潰しておきたい項目を並べると、次のようになる。
- 金型の再製作費と、補正が入った場合の負担区分
- 試作の回数上限と、回数を超えた場合の追加費用
- IP監修の回数と、承認を取るタイミング(試作/量産の二段構え)
- OK/NG判定基準の作成を納品物に含めるか
- 製造現場への基準共有と教育の工数
- 造形品質の検証にともなう発売時期の後ろ倒し余地
受託の入口を広げる動きは案件マッチングサービスの側でも進んでいるが、IP案件は入口より工程設計で差がつく仕事だ。
まとめ
MYPLATEのIP立体食品事業は、平面のキャラクターを食品の形で量産するという、造形と製造の両方に踏み込む受託だ。第1号事例では金型補正による造形変化と手作業の個体差が壁になり、数値化した判定基準を製造現場と共有することで収束させている。同種の相談を受ける工場が次にやることは記事を読むことではなく、自社の見積書と仕様書に「試作承認と量産承認の二段構え」「判定基準の作成者と納品範囲」の2行を足せるかを確かめることだ。
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