完全栄養食OEMの開発ガイド|市場と商品設計

この記事の要約
完全栄養食OEMの開発ガイドとして、国内市場2024年300億円から2030年546億円の成長予測、ベースフードや日清に代表される主食系の動向、1日推奨量の1/3を満たすPFCバランスとビタミン13種・ミネラル13種の配合設計、ビタミンB群や鉄分の独特な味を抑えるマスキング技術、パン・麺・ドリンク・バー等の商品形態選択、シニア・アスリート・妊婦向け特定セグメント特化の差別化戦略を解説しています。
目次

完全栄養食市場の急拡大とOEMビジネスチャンス

完全栄養食(完全食)市場は、2020年代に入って急速に拡大しています。特にコンビニの棚に完全栄養食のパンが並ぶようになったことで、「1食で必要な栄養素をバランスよく摂れる食品」という概念が一般消費者にも広く浸透しました。

この市場拡大に伴い、完全栄養食のOEM製造に参入しようとする企業が増えています。自社ブランドの完全栄養食を立ち上げたい食品メーカー、健康食品事業を強化したいD2C企業、法人向け福利厚生食として提供したい企業など、プレイヤーの層は厚みを増しています。

では、完全栄養食のOEM開発をどう進めればよいのか。市場動向から商品設計、製造パートナー選びまでを順を追って解説します。

完全栄養食市場の現状と成長予測

完全栄養食とは

一般的に、公的機関が策定した食事摂取基準に基づき、1食に必要な栄養素がすべて必要量以上含まれる食品が、完全栄養食と呼ばれています。
引用元:「完全栄養食(完全食)」とは、どのような食品ですか?(ベースフード株式会社)

サプリメントや他の健康食品が一部の栄養素を補えるのに対し、完全栄養食はすべてのビタミンやミネラルなどの栄養素を補給できるのが違いです。

完全栄養食の市場規模

日本国内の完全栄養食市場は、2019年には10億円程度の規模でしたが、2024年には約300億円に達すると見込まれています。さらには、2030年には546億円までに成長すると予測され、食品メーカーにとっても注目していきたい市場になります。

市場を牽引しているのはベースフードや日清が手掛けるパンや麺類などの主食系ですが、ドリンク、グミ、クッキーなどの間食系、さらにはレトルト食品のような食事系にもカテゴリが広がっています。

海外に目を向けると、HuelやSoylentなどの先行プレイヤーが大きな市場を築いており、グローバルでは数千億円規模の市場が形成されています。

日本市場はまだ成長途上であり、今から参入しても十分な成長余地があると考えられます。

完全栄養食OEMの商品設計で押さえるべきポイント

栄養基準値の設定

完全栄養食を名乗るためには、1食あたりに必要な栄養素を一定の基準以上含むことが求められます。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」をベースに1食分の栄養素含有量を設計するのが一般的です。

具体的には、1日の推奨摂取量の約3分の1を1食分に含有させる設計が主流です。タンパク質、脂質、炭水化物のPFCバランスに加え、ビタミン13種類、ミネラル13種類をバランスよく配合する必要があります。

味と食感の設計

完全栄養食の最大の課題は「おいしさ」です。栄養素を詰め込むと、どうしてもビタミンやミネラルの独特の味が出やすくなります。特にビタミンB群は苦味が強く、鉄分は金属的な後味を残しがちです。

この課題を解決するために、マスキング技術(風味を隠す技術)が重要になります。チョコレートやメープルなどの強いフレーバーでマスキングする方法、カプセル化された栄養素を使う方法、発酵技術で風味を改善する方法など、複数のアプローチがあります。

試作段階では、少なくとも3〜5回の改良を見込んでおくのが現実的です。栄養設計だけでなく、日常的に食べ続けたくなるおいしさを実現することが、商品の成否を分けます。

商品形態の選択

完全栄養食の商品例

パン、麺、ドリンク(粉末・液体)、バー、クッキー、グミ、レトルト食品など

それぞれの形態にメリット・デメリットがあります。パンや麺は食事としての満足感が高いものの、製造難易度とコストも高めです。ドリンク系は製造がしやすく、栄養素の配合もコントロールしやすいですが、パンや麺に比べると食事の置き換え感は弱くなります。

商品形態の選択は、ターゲット顧客のライフスタイルに合わせて決めるのがベストです。忙しいビジネスパーソン向けならドリンクやバー、健康志向のファミリー向けならパンや麺が適しています。

完全栄養食OEMの製造パートナー選び

必要な製造設備と技術

完全栄養食のOEM製造に対応できる工場は、通常の食品工場よりも技術要件が高くなります。多種の栄養素を均一に配合する混合技術、微量成分の正確な計量技術、熱に弱いビタミンの加工処理技術などが求められるためです。

健康食品やサプリメントの製造経験がある工場は、栄養素の取り扱いに慣れているため有力な候補になります。一方、パンや麺などの主食系を製造する場合は、食品加工の専門工場との協業が必要になることもあります。

パートナー候補のリストアップ方法

食品OEMの窓口などのマッチングサービスで「健康食品」「栄養補助食品」カテゴリの工場を検索するのが第一歩です。次に、健康食品の展示会(ifia JAPAN、健康博覧会など)に参加して、製造技術を持つ工場と直接コンタクトを取りましょう。

候補先との初回打ち合わせでは、栄養素の配合実績、品質分析の体制(栄養成分分析を自社で行えるか)、最小ロット、開発期間の目安を必ず確認してください。

完全栄養食OEMで差別化する戦略

特定セグメントへの特化

特定のセグメントに特化した完全栄養食を開発するアプローチが有効です。

例えば、シニア向け完全栄養食(やわらかさ・飲み込みやすさに配慮)、アスリート向け(高タンパク・カロリー調整型)、妊婦向け(葉酸・鉄分強化)、子ども向け(成長期に必要な栄養素を重視)など、ターゲットを絞ることで明確な差別化が可能です。

「日本の食」を活かした完全栄養食

海外の完全栄養食はシェイクやバーが主流ですが、日本の食文化を活かした完全栄養食はまだブルーオーシャンです。味噌汁、おにぎり、うどん、カレーなど、日本人が日常的に食べる形態で完全栄養食を実現できれば、大きな差別化要因になります。

サブスクリプションモデルとの親和性

完全栄養食は日常的に摂取する商品であるため、定期購入(サブスクリプション)との相性が非常に良いです。OEM商品の企画段階から、サブスク販売を前提としたパッケージサイズ(1ヶ月分セットなど)や配送頻度を検討しておくと、ビジネスモデルの設計がスムーズです。

開発スケジュールの目安

完全栄養食のOEM開発は、一般的な食品OEMよりも長い開発期間が必要です。目安として、コンセプト策定から初回出荷まで6〜12ヶ月程度を見込んでおきましょう。

最初の1〜2ヶ月でコンセプト策定と栄養設計を行い、次の2〜3ヶ月で試作と改良を重ねます。並行してパッケージデザインと食品表示の作成を進め、最後の1〜2ヶ月で量産試作と初回生産に入る流れが一般的です。

栄養成分の分析に時間がかかるケースがあるため、試作段階でのスケジュールには余裕を持たせておくことが欠かせません。

完全栄養食の製造に対応できるOEMメーカーは限られています。

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まとめ:完全栄養食OEMは「栄養設計×おいしさ×差別化」がカギ

完全栄養食のOEM開発は、通常の食品OEMよりも技術的なハードルが高い一方、成長市場での事業機会は大きいです。成功の鍵は、正確な栄養設計、妥協のない味づくり、そして明確なターゲティングによる差別化にあります。

完全栄養食のOEM開発を検討中の方は、食品OEMの窓口で健康食品カテゴリの製造パートナーを探すところから始めてみてください。

よくある質問

Q1: 自社製品を「完全栄養食」と表示して販売しても問題ないですか?

A1: 「完全栄養食」という表示自体は法律で定められた用語ではなく、業界の慣習的な呼称です。ただし、消費者に誤解を与える表現は景品表示法に抵触する可能性があります。具体的にどの栄養素がどの程度含まれているかを正確に表示し、「完全」の定義を明確にしておくことが欠かせません。

Q2: 完全栄養食OEMの開発費用はどの程度かかりますか?

A2: 費用は商品形態・原材料・ロットによって大きく異なりますが、目安として一般的な健康食品のOEM製造では初回80〜150万円程度が相場です。商品企画やレシピ開発から依頼する場合は、さらにコストが上がります。

最低ロットはメーカーによって異なりますが、1,000個〜対応しているケースもあります。

見積もりは主に以下の項目で構成されます。OEMメーカーとの役割分担を明確にし、不要なコストを抑えることが欠かせません。

  • 試作費:試作回数、原材料、工程の複雑さによって変動
  • 包材関連費:袋・トレー・外箱・印刷・ラベル作成費など
  • 表示作成・検査費:食品表示作成、栄養成分分析、微生物検査など
  • 初回立ち上げ費:製造ライン調整、型の作成、原料手配費用
  • 保管・配送費:保管料、配送コスト

Q3: 栄養機能食品の表示を行いたい場合、別途届出は必要ですか?

A3: 栄養機能食品は届出制ではなく、自己認証制度です。定められた栄養素について、1日あたりの摂取目安量が上限値・下限値の範囲内にあれば、所定の表示ルールに従って「栄養機能食品」と表示できます。ただし、機能性表示食品とは制度が異なるため、混同しないよう注意してください。

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この記事を書いた人

小島怜のアバター 小島怜 株式会社Agriture

株式会社Agriture CEO/食品OEMコンシェルジュ 乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業を手がける株式会社AgritureのCEO。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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