行き場が限られたいちごとおからが『蒸しパンの素』に——Kukulcanら3社の共同開発を未利用素材の出口設計から読む
農産物や食品素材の新しい売り方を掲げるスタートアップ、株式会社Kukulcan(東京都中央区、代表取締役:ホンリナ)が、2026年9月2日から9月8日まで、日本橋三越本店 本館地下1階で食の体験型POPUPを開く。韓国・済州島発のシトラスブランドGYULMEDAL、おからを手がけるOKARAT、食品加工の未利用素材を扱うASTRA FOOD PLANの4社が集まり、商品の展示・販売と試飲・試食で素材の背景を紹介する催しだ。
店頭イベントそのものは小売の企画だが、受託製造やPB開発の現場から見ると読みどころは別にある。会場で披露される「のらいちごむしぱんパウダー」の座組みだ。規格や流通上の理由で行き先が限られたいちごと、豆腐づくりで出るおからという二つの未利用素材を、混ぜて蒸すだけの粉末に落とし込み、3社が共同で開発した。素材を捨てずに商品へ変える出口の設計として読み解ける発表になっている。
日本橋三越に4社が集うPOPUP、その座組み
今回のPOPUPを企画・コーディネートしたのはKukulcanだ。同社は栽培支援AIの開発、農産物の加工および販売、農作物マッチングプラットフォームの開発を手がける2024年2月設立のスタートアップで、「農業」「AI」「フードロス」を掛け合わせた事業を掲げている。
集まった顔ぶれは、Kukulcanのほかに、日本初上陸となる済州島のシトラスブランドGYULMEDAL、おから食品ブランドのOKARAT(株式会社オカラテクノロジズ)、そして食品加工で生まれる未利用素材を扱うASTRA FOOD PLAN株式会社の計4社。会場では各ブランドの商品を販売しつつ、ピューレやジュースの試飲、各種商品の試食を通じて、素材とつくり手、商品の背景を伝える。会期は2026年9月2日から9月8日まで、営業時間は10時から19時までとされている。
行き場が限られたいちごとおからを「蒸しパンの素」にした共同開発
4社のうち、製造の中身に踏み込んでいるのが「のらいちごむしぱんパウダー」だ。これはKukulcan、OKARAT、ASTRA FOOD PLANの3社が、それぞれの素材・技術・商品開発の知見を持ち寄って共同開発した粉末食品である。
原料には、規格や流通上の理由で行き先が限られたいちごと、豆腐づくりの過程で生まれるおからを使う。小麦粉・白砂糖・保存料を使わずに仕上げ、材料を混ぜて蒸すだけでいちごの風味を楽しめる蒸しパンができる、という設計だ。特別な日のためではなく、毎日のおやつや朝食といった身近な場面で使える商品として位置づけている。未利用素材を「素材そのまま」ではなく、家庭で扱える完成手前のミックス粉に変えている点が、この開発の要になっている。
ASTRA FOOD PLANが持つ「過熱蒸煎」という粉末化技術
共同開発に加わったASTRA FOOD PLANは、従来はコストの問題で有効活用できなかった食品工場で発生する野菜類の未利用部位や、規格外農作物、飲料の抽出かすなどを新たな食材へ変えるフードテック企業とされる。
同社が持つのが、独自に開発した乾燥・殺菌技術「過熱蒸煎(かねつじょうせん)」だ。タマネギの端材やキャベツの外葉など、これまで十分に使われてこなかった素材を、風味や栄養を生かした食品パウダーへ加工するという。食品加工の現場には、一般的な食品ロスの統計では見えにくい未利用素材が残る。こうした乾燥・粉末化の知見を持つ企業が、いちごとおからの共同開発に名を連ねている点が、この座組みの特徴になっている。なお、今回の共同開発品にこの過熱蒸煎が使われたかどうかは、リリースでは明示されていない。
おからと済州島シトラス、素材ごとに違う出口
OKARATが扱うおからは、食物繊維や植物性タンパク質を含む一方で、食用として十分に活用されていない素材だ。同ブランドはアイデア・デザイン・技術の力で、おからを選びたくなる商品へ変えることを掲げている。共同開発品では、このおからが蒸しパンパウダーの構成素材として組み込まれた。
もう一つの出口を見せるのがGYULMEDALだ。祖父・父から柑橘農園を受け継いだ3代目のヤン・ジェヒョン氏が代表を務め、甘味・酸味・香り・食感の異なる済州島の柑橘を「みかん」とひと括りにせず、生果・100%搾汁ジュース・ジャム・キャンディーなど品種ごとの形で届けている。同じ「素材を売り切る」でも、粉末への加工と、品種別の商品展開という別々の道筋が一つの会場に並ぶ構成だ。
POPUPと共同開発品の概要
今回の発表の骨子を整理する。会期や出展社に加え、共同開発品と、そこで扱われる素材・技術の関係をまとめた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企画・コーディネート | 株式会社Kukulcan(発起人会社) |
| 会期 | 2026年9月2日(水)〜9月8日(火)/10時〜19時 |
| 会場 | 日本橋三越本店 本館地下1階 |
| 出展 | Kukulcan/GYULMEDAL/OKARAT/ASTRA FOOD PLAN の4社 |
| 共同開発品 | のらいちごむしぱんパウダー(Kukulcan・OKARAT・ASTRA FOOD PLAN 3社共同開発) |
| 共同開発品の素材 | 行き先が限られたいちご、おから |
| ASTRA FOOD PLANの技術 | 未利用部位などを粉末化する乾燥・殺菌技術「過熱蒸煎」 |
受託加工の現場が持ち帰れる論点
ここからは食品OEMの窓口編集部の見立てになる。今回の製品仕様やロット、賞味期限は公表されていないため、以下は乾燥粉末という加工形態から一般的に言える範囲の話だ。受託加工・PB開発の側が拾えるのは、未利用素材を「粉末のミックス」という形に変えた点になる。乾燥粉末は一般に常温で運びやすく日持ちしやすい形態で、扱いやすさや保管性を高められる。ただし、乾燥・粉末化はあくまで保管や取り回しの利点であって、原料そのものの供給量や季節変動が解消するわけではない。それでも、家庭で完成させる手前まで加工した状態で流通に乗せる出口をつくれる点に意味がある。
もう一点は、性質の違う素材を一つの形にまとめる発想だ。いちごとおからのように水分や風味の異なる素材を、混ぜて蒸すだけで仕上がる粉末に落とし込むには、配合を含めた作り込みが前提になる。素材の調達難やアップサイクルを起点にした商品開発は、Agritureが規格外野菜を扱うオフィス八百屋でも向き合ってきたテーマで、受託側にとっては「余る素材をどの加工形態で受けるか」を考える具体例になる。
まとめ
Kukulcanら4社のPOPUPは、店頭では試飲・試食の催しに見える。だがその中身は、未利用素材を粉末という扱いやすい形に変え、3社が知見を持ち寄った共同開発品だ。余る素材をどの加工形態で受けて商品に変えるか、という受託加工・PB開発の実務に引き寄せて読める発表だった。
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出典
- 株式会社Kukulcan プレスリリース(PR TIMES・2026年9月1日):農産物や未利用素材に、次の価値を。【味わい・感じる】食の体験型POPUPを9月2日より日本橋三越本店で開催


