介護食OEM製造ガイド|UDF規格・製造技術・フレイル予防対応を徹底解説

日本の高齢化は加速しており、要介護・要支援認定者も増加を続けています。介護食の加工食品市場は今後も拡大が見込まれており、施設給食の省力化ニーズと在宅介護シフトの両方がOEM需要を押し上げています。しかし介護食の開発は、嚥下機能に合わせた物性設計、UDF規格や学会分類への準拠、特別用途食品の許可取得など、一般の食品OEMとは異なる専門知識が求められる分野です。本記事では、介護食の分類体系から製造技術、法規制、OEM依頼のポイントまで、開発に必要な情報を体系的に解説します。

目次

介護食の分類体系を理解する

日本の介護食には3つの主要な分類規格が存在します。OEM開発では、どの規格に準拠するかで製品設計や販路が変わるため、まず全体像を把握しておく必要があります。

ユニバーサルデザインフード(UDF)4区分

日本介護食品協議会が2002年に制定した業界自主規格です。「かたさ」と「粘度」の物性値で4段階に分類し、パッケージにUDFマークと区分を表示します。特別用途食品には該当しないため、消費者庁の許可なしに販売可能です。

区分名称対象者食品の例
区分1容易にかめるかむ力が少し弱い方やわらか煮物、ほぐし魚
区分2歯ぐきでつぶせるかむ力が弱い方煮込みうどん、やわらか肉団子
区分3舌でつぶせるかむ力が大幅に低下した方ムース食、やわらかゼリー
区分4かまなくてよいかむ力がほぼない方ペースト食、とろみ付きゼリー

スマイルケア食(農林水産省)

農林水産省が制定した分類制度で、3色のマークで区分します。青マーク(栄養補給が必要な方)、黄マーク(噛むことが難しい方・JAS規格「そしゃく配慮食品」)、赤マーク(飲み込むことが難しい方・特別用途食品)の3段階です。黄マークはさらに4段階、赤マークは3段階に細分化されます。

嚥下調整食学会分類2021

日本摂食嚥下リハビリテーション学会が策定した医療・介護現場向けの分類です。食事を0〜4の5段階(コード0j、0t、1j、2-1、2-2、3、4)、とろみを薄い・中間・濃いの3段階に分けています。病院や介護施設での食事提供の共通言語として広く使われており、OEM製品のターゲット設定にも直結します。

コード形態主食の例対応するUDF区分
0j/0t嚥下訓練用ゼリー・とろみ区分4相当
1j均質でなめらかなゼリー・ムース区分4相当
2-1/2-2ピューレ・ペースト〜やわらかい粒ミキサー粥区分3〜4
3形はあるが歯なしで押しつぶせる全粥区分2〜3
4箸やスプーンで切れるやわらかさ軟飯区分1〜2

介護食の製造技術

介護食OEMの核心は「食べやすさと見た目・味の両立」です。単にミキサーにかけてペースト状にするだけでは、食欲を損ない摂食量が低下してしまいます。近年は形状を保ったまま軟らかくする先端技術が登場しています。

凍結含浸法

広島県立総合技術研究所が2002年に開発した技術です。食材を凍結→解凍→減圧し、酵素(ペクチナーゼ・セルラーゼ)を急速浸透させて細胞間の接着物質を分解します。食材の形・色・風味を保持したまま、歯茎や舌でつぶせる硬さに加工できるのが最大の特徴です。広島県が特許を保有し、全国の食品メーカーにライセンス供与しています。

酵素均質浸透法

イーエヌ大塚製薬が「あいーと」ブランドで展開する独自技術です。食材ごとに最適な酵素を選定し、圧力を変えながら浸透させることで、食感を残しつつ形が崩れないギリギリの軟らかさを実現します。延べ1,000万食以上の販売実績があり、介護施設を中心に高い評価を得ています。

ムース食・ゼリー食の製造

ムース食は食材を個別にミキサーにかけ、ゲル化剤(カラギーナン、寒天、ジェランガムなど)を加えて型に流し込み成形します。肉や魚介類には卵白を加えてミキサーにかけることで、ふんわりとした食感を付与できます。見た目を元の食材に近づける成形技術も進化しており、シリコン型や3Dフードプリンティングの活用事例も出始めています。

テクスチャー設計と品質管理

介護食はUDF規格や学会分類に準拠するため、硬さ・付着性・凝集性の物性値を数値で管理する必要があります。テクスチャーアナライザーで物性測定を行い、規格値の範囲内に収まるよう製造条件を最適化します。粘度管理にはコーンプレート型回転粘度計を使用し、20℃・ずり速度50s⁻¹の条件で測定するのが学会分類の標準です。

介護食市場のトレンドと商機

拡大する3つの需要領域

  • 施設給食の省力化:深刻な人手不足と給食予算の圧迫を背景に、完全調理済み冷凍惣菜(完調品)への切り替えが加速。レディ・トゥ・ユースのとろみ付き飲料や少量高カロリーゼリーの需要も増加中
  • 在宅介護シフト:施設から在宅への介護シフトに伴い、レトルト・冷凍の個食パックへの需要が拡大。薬局・ドラッグストアでの介護食コーナー設置も増えている
  • フレイル・サルコペニア予防:高齢者のたんぱく質摂取不足が問題視され、たんぱく質強化食品への需要が急増。食事摂取基準2020では65歳以上に体重1kgあたり1.0g以上のたんぱく質を推奨

OEM開発で狙えるポジション

  • 形状保持型やわらか食:凍結含浸法や酵素処理で「見た目は普通の食事、硬さは介護食」を実現。食事のQOL向上に直結し、施設の差別化にもなる
  • たんぱく質強化型:1食あたりたんぱく質15g以上を確保したレトルト惣菜やゼリー。フレイル予防を訴求
  • おやつ・デザート:やわらかプリン、ムースケーキ、とろけるようかんなど。食べる楽しみを提供し、栄養補給も兼ねる

介護食OEMの法規制

特別用途食品(消費者庁許可)

「えん下困難者用食品」として販売する場合は、健康増進法第43条に基づく消費者庁長官の許可が必要です。硬さ・付着性・凝集性の物性基準で3段階(許可基準I/II/III)に分類され、申請には臨床試験データの提出が求められます。許可を取得すると、パッケージに特別用途食品の許可マークを表示できます。

UDF自主規格とJAS規格

UDFは業界自主規格のため、消費者庁の許可なしに販売できます。物性値を規定しますが栄養学的配慮は規定外で、高齢者専用ではなく「食べやすさに配慮した食品」という位置づけです。一方、JAS規格の「そしゃく配慮食品」は農林水産省の管轄で、スマイルケア食の黄マークに対応します。

HACCP・アレルギー対応

介護食は多種の食材を使用するため、アレルゲン管理が特に重要です。特定原材料8品目の表示義務に加え、介護施設向けにはアレルギー対応メニューの提供が求められるケースが増えています。HACCPに沿った衛生管理は全事業者に義務化されており、原材料入荷から出荷まで全工程のCCP管理が不可欠です。

介護食OEM依頼のポイント

メーカー選定の5つのチェックポイント

  1. 対応する分類規格:UDF、スマイルケア食、学会分類のどれに準拠した製品を製造できるか。特別用途食品の許可取得サポートが可能か
  2. 物性測定体制:テクスチャーアナライザーや粘度計を保有し、ロットごとに物性値を検査できる体制があるか
  3. 軟化技術の保有:凍結含浸法のライセンスや酵素処理技術など、形状保持型やわらか食の製造ノウハウがあるか
  4. 小ロット・多品種対応:介護施設向けは多品種少量が基本。メニューの幅を持たせるため、1品目100〜500食程度からの対応が望ましい
  5. 栄養設計力:管理栄養士が在籍し、たんぱく質・カロリー・ビタミン・ミネラルのバランスを考慮したメニュー設計ができるか

介護食OEM対応メーカー一覧

介護食のOEM製造に対応できるメーカーを紹介します。

会社名所在地対応製品特徴
ユニテックフーズ株式会社東京都中央区ゼリー、介護食、増粘多糖類応用ペクチン・ゲル化剤のノウハウで嚥下困難者用食品の開発に強み。R&Dパートナーとして企業の商品化を支援
四国医療サービス株式会社愛媛県松山市チルド惣菜、冷凍弁当、介護食病院・施設給食の受託ノウハウを活かした介護食OEM。クックチル方式に対応
株式会社DELIPICKS東京都冷凍惣菜、スープ、介護食惣菜・スープ・離乳食・介護食の冷凍OEMに幅広く対応
井村屋フーズ株式会社愛知県ゼリー、ようかん、介護食デザートようかん・ゼリーの製造技術を活かした介護食デザートのOEM。やわらかゼリー食品に実績
株式会社メディカルグリーン介護食、医療食ベビー・介護食カテゴリの専門メーカー。医療・介護向け食品のOEMに対応

※掲載情報は2026年4月時点の内容です。最新の対応状況や詳細は各社にお問い合わせください。

よくある質問

UDF区分の介護食をOEMで製造するには何が必要ですか?

UDFは業界自主規格のため、消費者庁の許可は不要です。ただし、製品がUDF規格の物性値(かたさ・粘度)に適合していることを自社で確認する必要があります。テクスチャーアナライザーを保有し、ロットごとの物性検査体制を持つOEMメーカーを選びましょう。日本介護食品協議会への加盟が、UDFマーク使用の条件になります。

特別用途食品の許可取得にはどのくらいかかりますか?

消費者庁への申請から許可取得まで、通常6ヶ月〜1年程度かかります。申請には物性試験データ、栄養成分分析、場合によっては臨床試験データの提出が必要です。UDF規格での販売であれば許可は不要なので、まずはUDF準拠で市場投入し、実績を積んでから特別用途食品に切り替える段階的アプローチも有効です。

介護食OEMの最小ロットはどのくらいですか?

製品形態によりますが、レトルトタイプで500〜2,000食、冷凍惣菜で300〜1,000食、ゼリー・ムースで1,000〜5,000個が目安です。介護施設向けは多品種少量生産が求められるため、小ロット対応に強いメーカーを選ぶことが重要です。

凍結含浸法のライセンスを持つOEMメーカーはありますか?

広島県立総合技術研究所が特許を保有し、全国の食品メーカーにライセンスを供与しています。ライセンスを取得した企業は広島県内を中心に増えており、形状保持型やわらか食のOEM製造に対応可能です。具体的なライセンス取得企業は広島県の技術支援機関に問い合わせることで確認できます。

在宅介護向けの介護食OEMで注意すべき点は?

在宅向けでは、調理の手間を極力減らした設計が重要です。電子レンジで温めるだけ、またはそのまま食べられる設計が基本。パッケージも片手で開けやすいユニバーサルデザインが求められます。また、在宅介護者は食品表示を頼りに適切な硬さの食品を選ぶため、UDF区分や学会分類コードの表示を見やすく配置しましょう。

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食品OEMの窓口 ― カテゴリ一覧

食品OEMの窓口では、介護食以外にも幅広いカテゴリの製造委託に対応しています。

カテゴリ概要
健康食品OEM機能性表示食品やスーパーフードなどの健康食品を自社ブランドで展開
サプリメントOEM錠剤・カプセル・粉末など多様な形態のサプリメントを小ロットから製造
プロテインOEMホエイ・ソイ・ピープロテインなど、ブランド展開に最適な製造委託
冷凍食品OEM急速凍結技術を活用した冷凍食品の企画・製造・販売
洋菓子OEM焼菓子・チョコレート・ケーキなどスイーツブランドの立ち上げ
離乳食OEM安全基準を満たしたベビーフードの開発・製造
アレルギー対応OEM特定原材料不使用の安心・安全な商品開発
コーヒーOEMオリジナルブレンドコーヒーのブランド開発
飲料OEMジュース・お茶・エナジードリンクなどの自社ブランド飲料
スナック菓子OEMポテトチップス・せんべいなどのオリジナルスナック製造
グミOEM機能性グミ・フルーツグミなどの企画・製造

まとめ

介護食OEMは、高齢化の進行とフレイル予防への関心の高まりを背景に成長を続ける市場です。UDF・スマイルケア食・学会分類2021の3つの規格体系を理解し、凍結含浸法や酵素処理などの先端製造技術を活用することで、「食べやすさ」と「食べる楽しみ」を両立した商品開発が可能になります。

食品OEMの窓口では、介護食・高齢者食のOEM製造に対応できるメーカーを掲載しています。商品企画の段階からお気軽にご相談ください。

参考

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この記事を書いた人

小島怜のアバター 小島怜 株式会社Agriture

株式会社Agriture CEO/食品OEMコンシェルジュ 乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業を手がける株式会社AgritureのCEO。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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